第二十三話 試験当日2
僕は教師に呼ばれ、事情聴取の様なことをされている。
「なぜ、口論になったのか」や「相手を考えなさい」
など同じ事を繰り返し言われている。
貴族の順位的には相手の方が上になっているので言い分もごもっともであるが、なぜ僕だけが怒られないといけないのか考えてしまう。
そうこうしていると先生のうち一人が優しく声を掛けてくれた。
「君はメーティル様の教え子だと聞いたよ。 聡明な君ならば自分だけが怒られていることに納得がいかないはずだ。 必ず相手方にも注意をするように対応させてもらうので安心してほしい」
ここでメーティル先生の名前が出てくるとは思わなかった。
だが、思わぬ助け船が入ったようでありがたかったのは事実だ。
そしてもう一人の教師も続いて、
「理由も分かったし、テイル君だけが悪い訳ではないことも私たちは分かっているので今回はこのくらいで大丈夫ですよ」
と声を掛けてくれる。
謝罪をし、試験会場に向かうことにした。
試験会場である体育館の一角に先ほどの女の子達が居たので声を掛けておく。
「さっきはとんだ災難だったね。 大丈夫かい? いきなり居なくなってたから心配したんだけど...」
「はい、本当にありがとうございます。 助けに入ってもらったのにすぐに逃げてしまってごめんなさい」
と赤髪の女の子が謝罪をしてくる。
「本当に申し訳ありません...。 私達がもう少ししっかりした対応が出来ていれば...」
と金髪の子も続く。
「仕方ないんじゃないかな。 あれは急な出来事だったんだし。 魔法を使われて怪我とかしなくてよかったよ」
「「ありがとうございます」」
「僕はテイル・フォン・マルディン。 だけどいずれ家を出るし、気軽にテイルって呼んで欲しい。 友達とか居なくて困ってたんだ」
「私はエメリーです。 貴族ではないので家名は無いです。 実家は鍛冶屋をやっています」
と赤髪の子が言い、
「マリアです。 同じく家名は無いですが教会で巫女として働かせていただいています」
続いて金髪の子が自己紹介をしてくれた。
「二人ともありがとう、僕には敬語じゃなくて大丈夫だからね! 不敬罪とか言い出さないから!」
と軽く茶化す。
すると二人とも笑ってくれたので僕は心なしか満足してしまう。
人はやはり笑顔が一番綺麗だ。
そしてチャイムが鳴り、試験の時刻になったので席に着くことにした。
「これより第三八回期入学試験を行う」
教師の言葉により試験が始まる。
僕は筆を持ち、書き進める。
ほとんど分かる問題なので難なく進んでいく。
すると辺りがざわついているのに気が付く。
先程の青髪の男が声を荒げて教師になにか言っているのだ。
「おい! この問題はなんだ! 一度も習っていないところではないか! こんな問題を出すなんてどうかしているぞ貴様!」
こいつは根っからのクレーマー気質なんだろう。
僕はそいつを放っておいてどんどんと解き進める。
このままなら本当に主席もありえそうだなぁと考えながら時が過ぎるのを待つだけなのであった。