第二百三十八話 その頃
玉座に座り、貧乏ゆすりが止まらない陛下。
「医療班の出立を確認致しました!」
「続いて補給班の第二陣の出立も確認!」
「分かりました。 下がってよろしいです。 我々に出来るのはこれくらいでしょう…」
「宰相よ、いつも助かる」
心配が勝ってしまう陛下だった。
「陛下、朗報です。 【怠惰】、【暴食】、【傲慢】、【憤怒】がマーガレット英雄爵の助成をしております!」
「大罪の半数が…? 敵としては脅威だが味方ともなれば極めて優秀か…」
「【怠惰】は分かりますが他の三名がまさかとは思いますがね」
「しかし…【憤怒】達は…」
宰相は何のことか分からない様だった。
「陛下は何かご存じなのですか?」
「いや、まぁ…代々王位を継いだ者に伝わる話があるだけでな」
宰相はそれ以上は聞く事をしなかった。
聞いては何かが狂う…そう判断した様だった。
「さて、軽食でも摂る事にするか」
「畏まりました」
陛下はもうチャーハンの虜になってしまっている。
それだけでは無く、宰相もだ。
「まぁたチャーハンですか…。 今週何度目だと思ってるんですか…」
「いや、もう私達は中毒なのですよ」
「いや、テイルが厳しい状態って言うのにこれで良いのか…?」
「だからこそ貴方はチャーハンを作るのです!」
宰相のゴリ押しに、料理長はもう諦めて作るしか無いと悟る。
「料理長の腕もメキメキと上がっていますね」
色んな感情がごちゃごちゃに混ざり過ぎていて目が怖すぎる宰相には余り関わりたく無いのだが。
「ははは…はいよ、チャーハン二人前」
「では、ありがたく頂いて来ますね」
溜息混じりに頭を掻き始める料理長。
「もっと俺に料理を教えてくれよ…」
その独り言は誰にも聞こえてはいなかった。
「陛下、チャーハンですよ」
「来たか! これが一番良い…」
そっと影から見ていた公爵はもう完全に諦めて去っていく。
「奴らは食い意地張り過ぎだろう…」
流石にこの状況でアレは無いだろうと頭を抱える公爵。
その時、一人の男性と出会う。
「久しいな」
「えぇ、ご無沙汰しております。 その節は大変ご迷惑を…」
その男はテイルの父、アレクだった。
「貴殿は陛下に会いに?」
「えぇ、それと少し気掛かりな事があったので調べ物もしようかと思いまして…」
「そうか…。 私はこの辺で失礼する。 また時間を作って話そうではないか」
短い会話で終わったその場だったが、公爵は去り際に一言だけ残す。
「貴殿の子息であれば…この事態すら乗り切って見せるさ」
そう言って歩く姿にアレクは輝かしい何かを感じたのだった。