第二百二十五話 龍化
「かは…」
倒れ込む邪龍。
「圧倒的過ぎますね。 呪いも喰われ、戦闘要員の邪龍もこれでは歯が立たない。 あの時と同じ…ですか」
「いや? ちげぇぜ。 あの時は俺は居なかった。 しかも、残念な事に今回は逃がさねぇ」
(そいつらを殺すのは少し待ってくれ)
「この声は…。 龍神王か? どれだけ接触してこなかったと思ってるんだ」
(朕とて、悪いとは思ってはいる。 しかし、貴様は大罪と言う存在だからな)
俺にも聞こえているって事は聞いていて良い内容なのだろうか。
(先ほどテイル殿の倒した帝国の元皇帝の呪縛が解けた事により不死龍、腐食龍と言う上位龍が元の龍位に戻った)
龍位…?
(あぁ、テイル殿は知らぬか。 龍位と言うのはな。 龍が死んだ後に起こる魂の回帰。 謂わばリセットだ。 一度穢れた魂が一から再スタートされるのだ)
「じゃあ、この邪龍と呪刻龍も…」
「いや、邪龍ってのは元々悪性の存在として生まれてるはずだからそこまで性質は変わんねぇかもしれねぇな」
(然り)
いやぁ、まじで龍多すぎて訳が分からんぞ。
「邪龍…もう、龍化しましょう。 無理です」
「そうだな」
「「Gurrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」」
耳を劈く咆哮。
流石に二体の龍が至近距離で咆哮を放てばそうもなる。
しかもドーラ様とは違い、咆哮に知性の欠片も無い…ただの獣のソレだ。
「迫力が凄いね」
「他の大罪達はコレをまとめて相手してたらしいぜ」
「そうだよ。 大変だったね、僕は何もしてなかったけど」
「Grrrraaaaaaaaaaaaa!!!!!」
え、ジン諸共ブレスで滅ぼすつもりじゃないか!?
「貴様ら…。 覚えておけよ…」
「いや、ジン…逃がさないから」
「チッ…」
だが、このままブレスを放たれる訳にはいかないのだが…。
(精霊剣…どのくらい行けそう?)
(パパ…もう剣の形になってるのも限界だよ…)
流石に生まれて間もない精霊に無理をさせ過ぎたか。
(よく頑張ったね。 ゆっくりお休み。 後で美味しい物食べさせてあげるからね)
(うんっ!)
光の玉になり俺の中へと消えて行った。
致し方ない。 暴食から貰ったあの刀を使うか。
ブレス対策にも良さそうだ。
刀を取り出し、構える。
「テイル君。 こちらは気にせず戦いに集中してくれ!」
「【怠惰】はワシがカバー出来る位置に居るから安心せぇ」
はいよ…。
「オイ、一人で背負うなよ」
「なんだよ【暴食】…。 カッコイイ所だったでしょ」
「俺にも良いとこ寄越さねぇと美味いモン食えねぇだろうが!!!」
そこかよ!!!
気が抜けたけど、お陰で肩の力は一気に取れた。
思う存分戦えそうだ。