第二百二十四話 乱戦
「へぇ、【暴食】が助けに来るなんてどうしちゃったのさ? 悪い物でも食べた? …それはいつもか」
「相変わらず口がわりぃな。 勘違いすんじゃねぇ、こちとらヒーロー気取りで助けたワケじゃねぇよ。 マーガレット領ってのは飯が美味くてよぉ。 なぁご領主サマ? アンタが手を加えてから格段に料理のレベルが上がってんだよ。 食いモンに目がねぇヤツが黙ってられると思うか? だからよ…今アンタらにしなれたらマズイんだわ」
「飯も不味くなるし、状況も拙くなるって事ね」
「いきなり下らねぇ事言ってんじゃねぇよ!」
流石に怒られてしまったか。 いかんいかん。
「お喋りはそろそろよろしいですかね?」
「…てめぇよぉ? 昔の事覚えてねぇとは言わせねぇぞ」
「貴方に私の呪いが一切効かないと言う事ですよねぇ。 ですが…この近くに居るあの勇敢な方々はどうでしょうね?」
賢者達は自衛出来ると思うが…。 騎士や魔法師達はどうだろうか。
ほぼ自衛は不可能だろう…。
「おっと! こいつの呪いの発動は邪魔させねぇ!」
「てめぇは喋り方が被ってんだよ!」
「似た者同士って奴だな! 良いじゃねぇか!」
「…はぁ、そう言うの。 要らないんだわ。 永久ノ暴食 これは幾つかある固有スキルの一つさ」
「なっ! 魔素がどんどん喰われていく! 吸収してもそれ以上に喰われて…このままでじゃまずい、おい! 呪刻龍、まだか!」
「もう発動出来たはずです…。 そのはずですが…」
だが、何も起きて居ない。
呪いはおろか魔法すら発動して居ない。
ジンは【怠惰】と睨み合っており、動きを見せてはいない。
「これは悲惨だな。 上位の龍種ともあろう者達がこれでは…」
「元皇帝…あんたも人の事言えないだろ」
「黙れ!」
その言葉と共に無数の影が俺の身体を捕縛する。
これはアンデッドの一種だろうか。
だとしても生きた人間を掴む事が出来ると言うのは高位なアンデッドに違いない。
「しまったな」
「さて、これで終焉と行こうでは無いか。 若き英雄…だった者よ」
あと一歩。
「まだ、やり残した事があるんだけどな」
「命乞いか? 今更だな」
もう、射程圏内だよ。
「精霊剣アルバー…。 瞬閃!」
「は? 何故動ける…何故再生せん!」
「高濃度の魔素を纏ってたから完全には捕縛されてなかったんだよ」
「魔素ならアンデッドの糧であろう!」
それは一般常識だろうね。
だけど…。
「体内に取り込んで無理矢理凝縮して魔物ですら耐えられない高濃度の魔素を纏ってたんだ。 さっきの影はずっと手が焼けて辛そうだったぞ」
「バケモノめ」
「お前が言うなよ」
「「「いや、一番お前が言うなよ」」」
なんで総ツッコミが来るんだよ。
【暴食】なんて俺より絶対強いだろ。
「さて、元皇帝? そろそろ王手だと思うんだけど…」
「死して尚、最強の帝国は此処に在り!」
精霊剣のダメージにより再生不可になったせいでそのままさらさらと塵となり消えて行った元皇帝。
残す敵は…。