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二百十三話 良い情報、悪い情報

俺の周りの人間はほとんど酒癖が悪いと言う事が分かってしまったので多方面から酒造りに関して不安の声が上がり始めてしまった。

因みに俺もその一人だ。


しかし、俺はここ最近大好きなお酒をあまり飲んでいなかったのだ。


いや…みんなの酒癖が悪すぎて介抱に回るので手一杯だっただけなんだが。


まぁ、それとして今日は俺だけが【怠惰】に呼び出されている。

理由は一切教えて貰う事が出来なかった。


「【怠惰】? 入るよ?」


「あぁ。 いつでも入って良いよ」


部屋に入るといつになく真剣な面持ちでこちらをじっと見つめる【怠惰】の姿があった。


「良い情報(ニュース)と悪い情報(ニュース)…どちらから聞きたい? ちなみに良い情報は一つしかないのに対して悪い情報は二つもあるんだよね」


「そりゃたまげた…。 俺だけが呼ばれた…って事は…」


「おや? 今日は随分と察しが良さそうじゃないか? 嵐でも来てしまいそうだよ」


随分とまぁ不吉な物言いだ事で。

と言うか察しが悪くて悪かったな。


「…と、冗談はさておき、どちらから聞きたい?」


「悪い情報からで」


「そうかい。 なら一つ。 【嫉妬】が君の事を見張っていたらしくてねぇ。 それはもう心底ご立腹らしいよ。 完全にロックオンされたかもしれないね」


「それは…かなり悪いね、と言うよりも災悪だよ。 次は?」


一呼吸…たった一呼吸間を空けて【怠惰】が言い放った一言に俺は耳を疑った。


「別に人族に敵対意識だとか、殺意だとかを持っていなかった【色欲】だけど、交渉は失敗したよ。 ただ、唯一の救いは彼女は人々に対し敵対行動を取るつもりはない事だ」


「なるほどね…最初のインパクトが強すぎて後者が優しく思えるよ」


「まぁ、後者にアレを持ってきてたら絶望してたでしょ」


「確かに」


別に【嫉妬】が相手となると一番厄介かもしれないな。

古い言い伝えの通りならば…。


「あぁ、【嫉妬】の種族を教えてあげよう。 彼は唯一種のデーモンリーパー…所謂()()の様な存在さ」


「魂を刈り取る…みたいな?」


「まさしくその通りだよ! ほんとに察しが良いね」


「…うざいな…。 今回ばかりは皆を連れて行くなって言いたいんだろ?」


「うん、流石に()相手だと君以外は役不足かな」


あぁ、そこまではっきり言ってしまうんだな。

だけど、残念だ。


「あら? 役不足とは随分な物言いね?」


マキナさん? それ? 氷の戦略級魔法、無詠唱の二重発動ですよね?


「ワシらだって大罪である【怠惰】に一撃をお見舞い出来るのじゃぞ? ま、多勢に無勢…確かに一人の力では役不足じゃが」


「私だって、テイル様の刃でありたいのです!」


「ふぅん。 結界を張れば来れないと思って油断してたから攻撃をもらったけれど…。 ここまでコケにされたのなら流石に見過ごせないよね」


おいおい。 止めるのは俺だぞ、勘弁してくれ。


「なんじゃこの威圧感は…! 魔神王ですら赤子に感じるぞ…」


「テイル様が平気なのに、私が恐れるわけには!」


「ふぅん…。 そう? 骨の一本は覚悟してもらうけど…良いよね」


はぁ。 もう頃合いかな。


「はいストップ。 お互い子供じゃないんだから熱くならないの…」


「ごめん、ちょっと頭に血が上っちゃって…」


「同じくじゃ…」


「煽られたからつい…」


「じゃあ、反省した人から連れて行ってあげるからね。 もちろん【怠惰】もだよ」


「え? 僕、貴重な戦力なのに?」


「悪い事して反省しないんですか【怠惰】君は!」


「ごめんなさいー!」


はい、仲良しが一番です。


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