第二百十話 プレゼント
「あ、メイカ! これ良かったら受け取ってくれない?」
メイカに差し出したのはかなり正直自信作と言っても過言ではない出来栄えの剣。
一応メイカの普段使っている剣に合わせて作ったつもりなのだがどうだろうか…。
「!?」
あ、餌を渡したハムスターの様に飛び掛かって剣を握り始めた。
無我夢中で振っていて可愛いのだが周りに俺が居るのでとても危ないのを忘れないで頂きたいところではある。
「メ、メイカ…?」
「あっ…と、とても握りも良く、振っている感覚もおかしくありません。 それどころか、普段よりも何倍も繊細な剣戟が繰り出せてしまいそうな…」
「あぁ…。 なんかそこらへんに落ちてた龍神王様の鱗を勝手に使って剣にしたからかもね…。 あぁ、それの銘はグラムとかどうかなって」
「え、えぇ…。 グラムですか…かっこいいですね! とても良い響きです。 何か少し運命を感じる気がします」
「運命…ね。 と言うか喋り方は?」
まぁ、戦姫って言う天職とその銘は惹かれ合うモノがあるのかもしれないね。
「あ、あの…えっと…」
ん…? なぜだか俺の背後に途轍もない気配を感じるけれどなんだろう。
「テイル? どうして私の御前でメイカを虐めてるのかしら? さっさと次! 渡しに行く!」
「はい、申し訳ございません! 行ってまいります!」
何故なんだ!
ナナ、マリア、エメリーは一か所に居たので、まとめて渡す事にした。
「おーい。 皆に渡したい物があるんだけど受け取って貰える?」
「ん? テイル君からプレゼント…?」
「専用の鍛冶場でもくれるの? まぁ、あんまり鍛冶上手くないけど…」
それはいつか作ってあげたいとは思ってるけど…。
「エルフにプレゼントとは粋な事をするねぇ? このこの~!」
「え? エルフにプレゼントするって何か意味あるの?」
「え? 特に無いよ~?」
自由過ぎるだろ。
「なんだそれ…。 まぁ良いや。 まずマリアは結構なんでも魔法を使うから様々な属性に対応した杖…これは魔物…と言うか通常種の一角兎の角から作った物なんだけれど凄く魔力の流れが良くて変換効率も良いんだ。 ちなみに魔法の威力が増加する付与と、魔力軽減の付与がしてある。 名前はコルヌ。 角って意味だね」
マリアは可愛い物が割と好きな為に少しだけデザインにも拘っておいた。
結構おしゃれな感じに仕上がっていると自負しているのだが…。
「一角兎の角からこんなに可愛い杖が作れるんだね! テイル君ありがとう! 大好き!」
うわお、流石にそれは直球過ぎて来る物があります。 まぁ、好評なら良かったよ。
「マリアだけズルい! 私は!?」
「エメリーはこれ」
「えぇ…剣…」
「驚くなかれ? この剣は変形するのだ!」
「おおおお!!!」
食いつき良いな。
「見てくれ! 魔力を込めると、槍になるんだ。 これは魔剣の一種なんだけれど...新しく開発した物だから第一号になるよ。 ちなみに、これには特別に幾つか付与とかもしてあるよ。 付与の効果だけで白金貨三枚は超えてるみたいだったけど…。 名前はスラッシュランス」
「白金貨三枚!? スラッシュランス…ふふふ…テイル君! ありがとう! 大事にするよ!」
良かった。 だけどどうしてだろう、俺は含み笑いがとっても怖いな。
次はナナだ。 今か今かと待っている。
子犬みたいだな。
「じゃあ、ナナにはこれね」
「なんの変哲もない弓に見えるんだけれど…」
「酷い事を言うなぁ。 じゃあ軽く魔力を流してごらん?」
「ん? 軽く? …ってナニコレ!? 性質が変わった!?」
「うん、魔力を流す事で本来の性能を発揮する魔弓ってところかな。 その弓は狙った獲物は基本的には外さない。 そして、魔力を流し続けていればずっと矢が補充され続けるよ。 名前はフェイルノート」
「変哲もないとか言ってごめん…こんな凄いモノをありがとう」
喜んで貰えて何よりだ。
作った甲斐があると言うもんさ。
出来上がった武器達を見せたら「領主をやめても職人として生きていけるで」とジャービル様にお墨付きをもらったのでスローライフも良いかもしれない。
最後はマキナだ。 きっと喜ぶぞ…?