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第二百二話 【怠惰】

「博識なのは良い事だよ。 僕は勉強嫌いだけど」


それはそうでしょうね。


「え、えぇ。 【怠惰】さんでしたらそうかもしれませんね」


「…そんなに畏まらなくて良い。 伝説に名を遺す程の偉業を成し遂げた君と話がしてみたかっただけなんだ。 そして、あわよくば…」


「救って欲しい…と」


【怠惰】の表情がまるで大型犬に吠えられた子猫の様に驚愕している。

正直言ってしまえば今の発言は半分賭けに等しかった。


「何故分かるんだい…?」


「勘…ですかね? ずっと寝てばかりの生活が疲れてしまった?」


「そうだね、きっと大罪としては失格かもしれないけど…ね。 元人間の僕らしくて良いじゃないか」


少し悲しそうに元人間である事を教えてくれた。

人間から大罪になったと言う事はそれも進化の一つなのだろうか。

そこは少し不思議な所ではあるが。


「あぁ、疑問に思ってるみたいだね。 大罪と言うのは心の生み出した膿みたいな存在だよ。 だからとってもイレギュラーな存在なんだ。 本来なら殺す事はおろか、封印だって困難…いや、不可能なはずだよ」


「なら、なぜ太古の人達は封印出来たの?」


「大罪の半分は世界に対して敵対心を持っていない。 だから、全員で話し合ってわざと封印されたのさ。 【強欲】と【傲慢】、【憤怒】は頭が狂ってるから【色欲】に説得を手伝ってもらったけどね」


「なるほど。 【色欲】さんも味方という事?」


「いやぁ、どうだろうか。 【色欲】は種族としてはサキュバスだからね。 どう転ぶのかは僕にはちょっと分からないかな」


そう言えば魔王軍の四天王にインキュバスが居たな…。

サキュバスが居てもなんら不思議ではないし【色欲】の名に恥じない能力の種族であることも見て取れる。


「…。 何か条約などが結べれば平和的に解決するんだろうけど…」


「ま、そうなるね。 好戦的な子ではないから、話し合いの余地は多分誰よりもある事は保証するよ。 あと、一つだけ良いかな?」


「ん?」


「僕、今の時代のお金持ってなくて泊まる所無いんだよね。 お金…貸してくれない…?」


今後交渉のカードとしても活躍してもらったり、【怠惰】の魔法の能力を活かして働いて返して貰えばいいからそれは気にしなくてもいいだろう。

だが、街中にいきなり大罪を放ってしまって大丈夫だろうか…。


よし。 連れて帰ろう。

そこまで距離も離れて無かったのでとりあえずマーリン様にテレパシーで「今から【怠惰】を連れて行く」 と伝えたら、「お前は後で説教せねばならん」 と言われてしまったのは言うまでもない。


屋敷では妻達や使用人のヴァンパイア達が【怠惰】を見て腰を抜かし、それを見て【怠惰】と俺が苦笑いをすると言う一連の流れが出来てしまっていた。

頼むからすぐに慣れてくれ。

マーリン様だけはすぐに打ち解け、気付けばジャービル様とガイル様を呼び付けて何やら魔法について熱く語り合っていた。


羨ましい。 俺も混ぜて欲しい。

ところで俺の執務はいつ終わるのだろうか。


「旦那様、執務がかなり過酷なご様子…。 この爺めで良ければ微力ながらお手伝いいたしましょうぞ」


気付けばキングが爺や的なキャラになっており、我が家のマスコット的な存在になっていた。


「助かるよ。 と言うかこんなに仕事が出来る王って相当慕われてたでしょ?」


「全盛期は多少は…。 今はどうなのでしょう? 皆、どんどん才能を伸ばしておりますから」


「若い子達が育っていくのは凄く素晴らしい事じゃないか。 むしろ、そういった子達を育て上げて来たキングは誇って良いと思うよ」


「旦那様…貴方様がこの屋敷の中でも多分下から数えた方が早いくらいお若いのですぞ?」


「確かにそうだった…。 って、キング!? もう渡した分終わってるの!?」


「おや? この程度でしたら目を瞑りながらでも出来ますぞ? 旦那様は何やら手が動いていない模様ですな。 もう少しこの爺めに押し付けてもよろしいのですぞ?」


キングが有能過ぎて怖いんですけど。


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