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第二百一話 宰相が壊れた。

「テイル・フォン・マーガレット英雄爵よ、前へ」


言われた通りに前に進み臣下の礼を取る。


「…宰相よ、余はもうなんと声を掛ければ良いのか分からぬ。 この者の働きに相応しい言葉とはなんだ? 果たして存在するのか?」


「…陛下、それは私も同じ気持ちに御座います。 心中お察し致します。 ですが、一国の王たる陛下がマーガレット卿に最初に掛ける言葉は一つなのではございませぬか?」


「む。 そうであったな。 臣下テイル・フォン・マーガレットよ。 面を上げよ」


一番大事な所を忘れられていたらしい。


「はっ!」


しっかりと返事をし顔を上げる。

先程の様子とは打って変わって陛下はキリっとした表情で勇ましく一段と格好よく見える。


「此度の大罪の一柱である【強欲】の討伐を成し遂げると言う偉業…心から誇らしく思う。 大罪とは太古より討伐が出来ず人々だけでなく神々をも苦しめて来た存在だ」


それは俺も流石に知っている。

かつての英雄達でも屠れず神の介入すらはねのけた存在であるのは貴族だけでなく平民にも知れ渡っているくらいだ。


「本来であれば封印し何千、何万と時を経て対策を取る物だったのだろうが…。 そして、救いだったのは動き出した大罪が【強欲】のみであった事だろう。 正直に申せ。 残りの大罪が纏めて暴れ出したら…止められるか」


貴族達が唾を飲み込んだ。

期待を一身に背負う…と言うのか、なんなのか。


「【強欲】と同じ戦い方をするのであれば出来なくはない。 が答えとなります」


「というと?」


「大罪とはその名を冠する通りの能力はきっと持っているのでしょう。 例えば【色欲】であれば魅了の派生形の能力だろうと予想が付きます。 現に【強欲】も若干ですがバトルジャンキーな所や性格に僅かな強欲さがありました。 性格に現れるのか、能力に現れるのか…。 対峙してみなければ分からない連中でございます」


ふむ、と言いもじゃもじゃの髭を撫でて考え始める陛下。

折角整えてたのにもったいない。


「まさか、【強欲】も復活して間もなかった為に全盛期の力では無かったとかは無いか?」


鋭いな。 正直その線に関しては俺も思っていた。

最後の一撃は例え全盛期の大罪だとしても喰らえば一撃だろうと思うが、喰らわなければただの素振りだ。


「…私もその様に考えておりました」


「次に来るならば【色欲】か【嫉妬】か」


「それも考えましたが…【暴食】の線が濃厚かと…続いて【怠惰】と考えております」


「ふむ。 理由を述べよ」


俺は理由を述べ、そしてとある作戦を語った。

貴族達は悲鳴を上げ、陛下は頭を抱えてしまった。

宰相閣下は天井を見上げ見えない染みを数え初めてしまっていた。

それほどまでに強烈な作戦だったのだ。

そう、それほどまでに狂っている…。

相手が相手だからこそ出来る方法だ。


最後には陛下は好きにしろと言い、貴族達も俺のやる事なら…とバックアップを快く承諾してくれた。

それは清々しい表情で。


「テイル…お前は全く何を考えとるんじゃ? あれは流石に脅しじゃぞ?」


「どこがですか? 正直、俺達では【嫉妬】、【傲慢】、【憤怒】には絶対勝てないんだから狂った事しないとしょうがないじゃないですか」


「だからって良くもまぁ…。 ワシゃ知らん…。 とりあえず、皆にはワシから報告しておくからな。 テイルは先にやる事があるんじゃろ?」


ほう。 よくわかったね。


「えぇ、じゃあ…ちょっとここで逸れますね」


そして、俺は少し逸れた道に入ることにする。

短い銀髪に薄い水色の瞳、そして何より非情に整った中性的な顔立ちのその少年。

まさにとある書物に出て来たその人物の容姿その者だ。


ふぅ、一呼吸を置き力んでしまっている肩の力を抜き、勇気を出して声を掛ける。


「予定より少し早い登場じゃありませんか? 【怠惰】さん?」


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