第百九十九話 共犯者...料理長【閑話】
まぁ、冷めてからだと盛り付けにくいのでさっさと盛り付ける。
お皿に綺麗なドーム状の物を六つ。
「何やら一つ多い様子ですが…」
「いや、料理長の物も用意しておきました。 ここまで見て貰っておいてはいお預けですなんてとんだ生殺しですから」
「テイル!? なんて良い奴なんだ…」
「その言葉遣いを見逃すのは今回だけですからね」
バトラーさんもなんだかんだ優しいのが良い所。
さて、盛り付けも終わったけど、これどうするんだろうか。
「これは、陛下に先に献上致しましょう。 陛下と宰相閣下は現在執務室です」
なるほど。 ちゃんと普段はお仕事をしている偉い人だったんだ。
「分かりました。 冷める前に向かいましょう」
「では、皆様私に着いて来てください。 料理長も」
「…俺も?」
明らかに不思議そうな顔をする料理長。
自分は全く当事者じゃありませんよって言う顔をしている。
「貴方は調理場を貸す判断をしましたから、マーガレット卿の出すお料理をもしも陛下お気に召したらそれは功績になります。 ですが、逆に気に入られなければ貴方も立派な共犯ですよ? 分かっていますか?」
「う、うげ…」
心から嫌そうな声が出ている料理長。 なんだか見ていて可哀想。
とまぁ、他人事である。
「ま、行きますよ?」
と、歩く事しばし。
執務室の前に着いたらしい。
何故か扉が少し空いており中から声が聞こえる。
「何故こんなにワシの代に色々起こるのか…」
「退屈しなくてよろしいのでは?」
「そういう問題ではないと思うんだが…?」
「陛下、質問に質問で返さないでください」
「申し訳ない」
「はい、ちゃんと髭整えて下さい」
何やってるの? この人達?
バトラーさんは無言で音を立てない様に扉を閉めて、ノックをする。
「バトラーでございます。 マーガレット卿、賢者マーリン様、料理長をお連れしました」
「む、入れ」
ところで、バトラーさんそのチャーハン六つ持ちながらノックする芸当どうやってるんですかね?
そういう疑問も取り残されながら執務室へと入る。
「どうした? まだ時間には早いぞ? ワシが恋しくなったか?」
「いえ、マーガレット卿が御料理を御作りになられたので…まずは陛下にお召し上がりになって頂きたくお持ち致しました。 人数分ありますが、毒見は私が致しましょう」
「分かった。 頂こう…って、え? テイルが作った?」
「えぇ、私にもテイル殿が作ったと聞こえましたね」
宰相も呆れてる。 そうだよね。 そうなるよね。
「もうテイルのやる事に驚いたらキリがないのは分かった…」
「そうですね、多分心臓と胃が幾つあっても足りなくなりそうですね。 色んな意味で」
どういう意味ですか?
「…では、冷めないうちに毒見の方を始めてもよろしいですか?」
「頼む」
上品に一口運ぶ。 所作が綺麗だ。
スプーンじゃなくてレンゲ渡せばよかったかな?
「美味しい…ではなく…毒性は一切ありません。 陛下、お召し上がりください。 きっと温かい方が美味しいでしょう」
「…では頂こう」
俺には何が起きたか分からない…。
ただ、瞬きが終わった頃にはチャーハンが消えていたんだ。




