第百九十五話 どんぶらこどんぶらこ
『桃太郎』日本人なら皆知っている話だろう。
だけど、本当に川に桃が流れてくるのなんて目にすると思っていなかった。
「どんぶらこ〜どんぶらこ〜」
「…何それ」
「桃太郎…って言う地球の物語だよ。 桃から産まれて鬼…こちらで言うオーガを倒すって言う物語」
「訳が分からないけどなんか幻想的ね」
「確かに風情があるわ」
まぁ、風情はあって損はない。
「ただ、貴族が自ら川に入って桃を取りに行くのはどうかと思うわよ」
「いや、つい…」
もう、衝動としか言えない。
桃太郎の話だったら包丁か何かで割ったんだっけ。
中に子供入ってるのに良くも包丁で…。
じゃあ俺もやってみるか。
すっとマジックバッグからナイフを取り出す。
「思ったけどやたらデカイなこの桃」
「いや、ふと思わなくても大きいわよ?」
よし、割ろう。
ミスリル合金で出来たナイフの為か魔力をちょっと纏わせたら直ぐに切れた。
だが中心部には膜というか結界の様な物があり何があっても切れないのでアボカドの様に周りをぐるっと回すように切る。
…すると中には結界に包まれた精霊の幼体と思わしき子が居た…。
その子と目が会う。
「パパ」
おいいいいいいいいい!!!
「誰が?」
「パパがパパ」
「俺?」
「そう」
「テイル?どういう事かしら?」
「知らん」
助けてくれ、どういう事だ。
「神様からパパについて行けって言われた。 私は『妖精の国』で産まれた精霊。 ある種異端児。 パパの思念の一部から産まれた。 本当に異端」
妖精の国…存在は知っていた。
前世の好きな作品に出てきたからだ。
実在したんだな。 地球の妖精にも会ってみたいものだ。
「ん、会える。 いつがいい? 私は次元を繋げれる。 魔力の消費が凄いから少し…気絶する」
「思考が読めるのか。 無理しなくていいよ。 そうだないつか会えれたらいいな、って程度だから」
周りはポカーンとしてる。 そりゃそうだ。
近付いて来る反応がある。
オーガとその統率種…。
しかも学院の入学試験で戦ったくらいかそれ以上に強いな。
リベンジマッチと行こうか。
「皆! 学院の入学試験の時の悪夢並のオーガが群れで近付いて来た。 俺一人でやる。 手を出すな!」
「そんな!」
「リベンジマッチなんだ!」
ただのプライドです!
先手必勝駆け抜ける!
木々が遮蔽になり敵からは視認されていない、だが俺はサーチで位置が分かっている。
一気に駆け寄り雑魚を刈り取る。
首に一閃…また一閃確実に仕留めていく。
だが統率種に焦る様子は無い。
まるで奇襲がわかっていたかのような。
あぁ、そうか。 そこの後ろに隠れているゴブリンメイジにサーチをさせていたんだな。
頭が回る様だ。 ゴブリンメイジの首を撥ね様とする。
が寸前で止められる。
あの距離を一瞬で詰められるのは通常なら有り得ない。
一つ思い当たる節はあるとするなら縮地だ。
だがモンスターが縮地を?
「ニンゲンよ、我が同胞を屠るその力大変見事である。 しかし、それもここまでだ、ここで朽ちよ」
え、めちゃくちゃ流暢なんですけど。