第百八十九話 新たな学院
その日の夕方すぐに候補の人達と会うことが出来た。
結果としては全員雇うことにした。
戦力になりそうな元高ランク冒険者が複数人居たからだ。 加齢や家の事情による引退だったので問題は無いだろう。
「私は執事希望ですが、雇っていただけるのなら門番でも見回りでも構いません。 妻と子供に苦労をさせたくないので...」
この言葉がきっかけだっただろう。
皆の事情を聴いて回った。 それぞれに事情があり、不純な動機の人は一人も居なかった。
これは冒険者ギルドのマスターにも確認済みなので間違いはほぼ無いだろう。
まぁ、ヴァンパイアを一人だけ残しておけば有事の際も大丈夫だろうというのもあったが...。
これはマーリン様の入れ知恵だったが、一人の青年のヴァンパイアがその役を買って出るとの事だった。
更にはもしもの事があった時の為にとテイムまでさせてくれたので安心だろう。
「くれぐれも謀反は起こさないでくれよ...」
とマーリン様に陛下からの伝言を賜った。
俺がそんな事すると思うのか! まったくもってわからないが...。
そして、アレク父様からマルディン領とマーガレット領を繋ぐ道の舗装も頼まれた。
これは別に構わない。 元々、クリスエル侯爵領とも繋ぐ予定ではあったし。
輸入出の経路が増えれば舗装に要した費用なんて回収はすぐに出来てしまうのだから! うふふふ。
「テイル? 悪い商人みたいな顔をしているわよ?」
「そうですね、私もそう思います」
「テイル君...たまに凄い顔するよね...」
「たまに背筋に悪い笑みを浮かべてる時あるもんね~。 聖剣を作った時とかもやばかったらしいし。 マーリン様を人柱にしながらニヤニヤしてた...」
味方は居ないのか!?
「え、テイル様はいつもこういう顔してませんか...?」
「旦那様いつも変だよー」
メイカ? ナナさん? ちょっと?
味方になってくれそうな人すら居なかった..。
「ですが、我々ヴァンパイアはテイル様とナールム様に救われたので自信を持ってください...!」
キングさん? それ、慰めになってないです。
なんなら鋭いナイフが刺さってます。
「あ、話変わるけど、商会の名前は『テイル商会』にしたよ。 万が一、俺とかが貴族で無くなっても困らない様にこの名前にしたんだ」
「いい考えだと思うわ」
「あ、それと公爵家でお世話になってる俺の弟子達だけど、ほとんどは俺のマーガレット領に来てもらってテイル商会の役員候補になってもらうことになったよ」
「ほとんど...と言うのは?」
「一人は公爵家、もう一人は王家に仕えて貰う事にしたんだ。 ほぼ俺の一存だったんだけどね。 あと、もう一人は先生になってもらうべく専用の教材で育成してるよ」
「え!? 聞いてないんだけど」
ふむ、伝えて無かったか。
まぁ、情報にはたまにズレが生じるものだろうし、致し方ない。
「ま、まぁそういうこと。 それと、皆にはマーガレット領に作る『学校』の先生も務めて貰いたいと思ってる。 教えるのは読み書きと算術かな。 魔術は三賢者達にも手伝ってもらう事になってる」
「!? 国立の学院が王都外に出来るの?」
「いや、全部俺の私費だよ。 学費に関しては平民『は』無償だよ」
「でも貴族からは取るの?」
「貴族には基本的に他の学院に行ってもらう事になるからね。 貴族まで無償にしたら陛下に謀反だと思われちゃうよ?」
謀反だけは起こすなと言われてるので…。




