第百八十六話 朝のひと時
凄い勢いで飲み干し、問答無用でベッドに入っていくサリィ。
えぇ、マジですか。
大丈夫なのか?
まぁこうなった以上致し方ないか。
「テイル~はやく~」
「はいはい…」
そっと横になる、とりあえず無になる。
「ん~…」
え? もう寝てますね?
安心しきったのだろうか?
よし、寝るぞ! 寝るったら寝るぞ!
良くある違和感で起きたら上に女の子が居るって言うパターン…実在したんだね。
どんな寝相したらこんな事になるのかはいつか解明したい。
女性とここまで触れ合ってるのは前世も含めて実際初めてなので動揺が止まらない。
「ん~、テイル…」
まだ、少し早いしこのままにしておくか。
俺も身体の一部の違和感を押し殺しつつ、もうひと眠りする事にした。
意識を放してから数分? 数十分経ったところで身体を思いっきり揺すられて起きる。
「テイル! 何もしてないよね!?」
「一緒に寝ただけじゃん…」
「ふぅん。 この変態!」
なんで? と思ったのは一瞬だった。
身体は歳相応なんだね…。
元気満々だ…。
「っ! 着替えるからほら早く出て行って!」
くすくす笑うサリィを部屋から押し出す。
扉を開けた瞬間に扉の前に居たメイカと目が合い凄い何かを企んだ様な顔をしてから、ニコリと笑い「昨晩はお楽しみでしたね!」 と言ってくるもんだから流石にツッコミを入れる。
制服に着替えたり準備をしたりして朝食を摂りに向かう。
「テイルと一緒に寝たけど、手を出してこないのに朝はとっても…」
「おいいいいいいいいいいいい!!!」
ジトーっとした女子達の視線を無視し席に座る。
「いただきます」
それに続いて皆復唱する。
「この儀式するとクロキとかの事思い出すなぁ。 初代勇者も噂では日本からの転移者やったらしいし」
「そうなんですねぇ。 地球だと日本以外にも食べる時に儀式の様な事をする文化はありますよ」
「ここやと一番偉い人が食べ始めたら勝手に食べるって文化も多いから斬新でええわ」
そういう考えもあるのね。
決して嫌だとかそう言う事じゃないなら良かった。
あれ? マーリン様とガイル様は帰ったのになんでジャービル様は居るんだ?
「あぁ、人ん家で食うタダ飯は最高や!」
誰かこいつを摘まみ出してくれ…。
周りは何事も無く食べている。
本来三賢者ってかなり尊敬される人達なんだけどな…。
「ねぇテイル?」
サリィが声を掛けて来る。
「ん?」
「ムッツリヘタレ英雄爵って名前に変えたら?」
何言ってんのコイツ。
「うるさい! ご馳走様! ほらマリア、エメリー! 学院行くよ! 今日は父上達も見に来るからね」
もう、今日の卒業式がいろんな意味で耐えられそうにない。