第百八十三話 エメリー捜索
なんとか卒業出来た…。
好きな事に関する事なら全然覚えられるんだけどな…。
「テイルよ、お前にも苦手なモノがあるんじゃな」
ニヤニヤと笑うマーリン様。
「人間は完璧じゃありませんから」
「頭が良いんだか悪いんだかほんとにわからんわい…」
褒めてるのか貶してるのかはっきりしてくれ。
まぁ苦手なモノがあると言ってもそれでも首席卒業なのだから問題はないのだろうけど。
「じゃあ教室に戻りますね」
「頑張って来いよ」
その意味を知ったのは校長室を出て直ぐだ。
ちょっと歩いて生徒達が歩いてる所を通るんだが、道が割れた。
黄色い歓声ばかりだ。
どうしてこうなった。
容姿は確かに悪くは無い方かもしれないが…。
「テイル―くーん? 女の子にきゃーきゃーされてさぞ気分がよろしいんですねぇ?」
マリアが膨れっ面で袖を掴んできた。
あれ? エメリーはどうしたんだろう。
「そんな事は無いけど、嫌われるよりは良いかなって思うよ」
「ふぅん。 そう言えばエメリーを見かけませんでしたか?」
「見てないな。 一緒じゃないの?」
「はい、てっきりテイル君と一緒に居るかと思ったのだけど」
なんか不意に不気味な気配を感じた。
決して相手は強者ではない。
俺に対して何かを企んでいる。 そんな気がする。
「今の…なんだ?」
「テイル君も感じました? 不気味ですね」
「とりあえず教室へ行こう」
教室へと入ると、同じクラスだった子達に囲まれる。
聖徳太子ではないのでこの人数で一気に喋りかけられても俺は聞き取れない。
一つ気になったのは、その場にもエメリーが居なかった事。
もう卒業資格は皆取ったのでもう学院には行かなくても良い。
卒業式は本来任意なんだが俺は主席だから出て欲しいと言われ出る事にするが。
「マリア、この後一緒にエメリーを探しに行こう」
「そうですね!」
学院を後にした俺達は、エメリーの魔力の残滓を辿ってみる事にした。
驚くべき事にエメリーの実家から一歩出た所で、地面にあった魔力の残滓は消えていた。
空気中には魔素があるのではっきりとは言い難いが若干残滓が残っている。
それを辿る。
残滓は普段魔物狩りをする場所の更に奥にあると言う遺跡に続いている。
まるで、誘っている様に。
しかし、放っておく訳にもいかないだろう。
意を決して入っていく。
中に入ってはっきりと分かった。
犯人は暗殺に長けている事と、残念な事に人工魔族だって事だ。
皇帝が生きてんだから他にも生き残りが居ても可笑しくはない。
奥へと進むと一つの扉があった。
「ようこそ英雄殿。 お早いご到着の様で? あと一刻遅ければこの女を同胞に加える所でしたよ」
こいつは人工魔族の作り方を知っているって事か。
それは絶対この世界にあってはいけない技術だ。
「おっと、動かないでください? こちらの少女もお知り合いでしょう?」
サリィ…。
その目は虚ろで、精神干渉を受けている様に見えた。
「私が英雄殿を殺すのは簡単です。 しかし、それでは興が乗らないでしょう? なのでこの子に貴方を殺して貰う事にしましょう」
それだけじゃない。 俺を殺すために姿を隠している者も居る者も何人か居る。
さて、どうしたものか…。 マリアも一歩も動けないので魔法を唱えられない。
無詠唱だとしてもこの状態からノーモーションで放つことは不可能だ。
こんな時異変に気付いてくれる優秀な公爵令嬢でも居たらなぁ。
「領域氷結。 まだ、短縮詠唱しか出来ませんが良い出来でしょう? お待たせ、テイル。 暴れていいわよ!」
待ってました!!!