第百八十話 日本語が通じた
「テイル! 大丈夫か!?」
「えぇ、なんとか」
「一体何が…?」
「ジンと皇帝に別の場所に一時的に転移させられていました。 ですが、皇帝の方を圧倒したらすぐに相手は撤退していきました」
「まさか! 皇帝を一人で倒したのか?」
「いえ、生命力が高かったのと撤退されるのが早くてとどめは…」
「そうか…」
そう言えば何か魔物の気配をしっかりと感じられるようになったな。
これは何なんだろうか。
結界の様な物が消えたからだろうか?
「ところで進捗は?」
「雑魚はもうこちらで対処出来そうじゃ、しかし…」
「エキドナですね?」
「あぁ、微動だにせず、その場に居るだけで攻撃をすれば弾く程度じゃ」
ふむ、エキドナは人を喰らうとは聞いたことがある。
しかし積極的に攻撃しないのは何故だろう。
騎士団とか沢山居るから餌が来たくらいにはなるとは思うんだが。
「とりあえず行ってみましょう」
気配が濃くなってきた。
これがエキドナだろうか。
身体強化を掛け、目に魔力を集中させてその姿を遠くから見る。
「とても美人ですね、上半身は」
「そうじゃな。 お前の妻達と比べたら劣るがあれは美人じゃ」
近付いていくと明らかにこちらを見た。
にっこりと微笑まれる。
余裕があるのだろうか。
いよいよ眼前と言う所まで来た。 騎士団に一旦少し下がってもらう。
「エキドナさん? で合ってますか? 言葉は分かりますか?」
『そう呼ばれているわ。 聞き取れはするけれど、喋る事は出来そうにないわね。 発音が難しいの。 日本語なら分かるのだけど』
流暢な日本語に聞こえる。
『では、日本語で喋ります。 貴女の目的はなんですか?』
『あら、貴方はやはり日本の…。 いえ、目的ですね。 私は呪いの武具を持たされました。 しかし、呪いの種類が特定出来ていないのに持たされました。 鑑定をも弾いたのでしょう。 それ以降、私には人を食べたいと言う欲求が消えてしまいました。 ですが、尖兵として送り込まれたのは事実です。 幸いにも自我がありますので、敵対の意は無いとだけお伝えします』
『少しお時間を頂いても?』
『えぇ』
俺は騎士団長とマーリン様を呼び経緯を話す。
すると予想外の反応が返ってきた。
「ならばこちら側に付いて貰うのも良いのではないか? このエキドナ? と言う者は敵意が感じられず、魔物を操っていたと言う様子も感じられん」
「えぇ、戦闘に関しても我々の攻撃を軽く流すくらいですからね。 敵対の意が無いのであれば良いと思います。 なにより彼女は美しい」
色ボケ騎士団長が居るぞ。
「まぁ、容姿に関しては好みは人それぞれだから一旦置いておいてください。 問題は洗脳されていないかですが、俺は高レベルの鑑定が使えます。 そして、俺とフォンドニア嬢はエキドナとは意思疎通が取れます」
「ならば仲介はテイルに任せる。 騎士団長、良いか?」
「はい」
俺はエキドナの方に再度近寄り今の内容を伝える。
『では、私を鑑定で視てください。 もしも、最悪な場合は討伐をしてください』
『分かりました』
鑑定を行ったが一切洗脳の気配は無く、隠蔽された様子も無い。
それを両者に伝えるととても喜んでおり、エキドナも魔物を倒すのを手伝ってくれるようになった。
「テイル…今度は魔物? 怪物? の女性ですか?」
「ブッブッブー(タラシなんですか?)」
いや、違います。 誤解しないでください。
っていうかアルの発言がどんどん鋭くなってきてる気がする。