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第百七十八話 王は苦労人

早速転移したら門の丁度目の前だった。


皆を驚かせてしまったらしい。


「ま、マーガレット伯爵…? これは?」


「信じてくれるか分からないけど、転移の魔法だよ。 それと新しく仲間になったミノタウロスだね」


あんぐりとした表情になった門番を勤める衛兵。


「スタンピードの事ですぐに知らせなきゃいけない事が幾つかあるから陛下にお目通りを願いたいんだけど良いかな?」


「承知しました。 すぐに確認を取ってまいります」


門番の一人が全速力で走って行った。

身体強化も使わずにあの速さで走れるのは凄いな。

俺もトレーニングしないと駄目だろうか…。


待つこと数分。


「陛下と宰相閣下がお会いになるそうです。 どうぞお通りください。 場内は侍女がご案内する事になっています」


「分かったよ。 助かる」


俺達は陛下の元へと向かう。


「ここは公式の場ではないから普通に喋るが、色々聞きたい事はやまやまだが…テイルはもうスタンピードを鎮めて来たのか?」


「いえ、それについてなのですが、一つの街は襲撃を収めました。 しかし、もう片方は騎士団が向かっているはずです。 これから応援に向かうつもりですが、ご報告があり参りました」


頭を抱えた陛下。 大変なんだね。


「よい、言ってくれ」


「スタンピードの主はどちらも異世界の者なので確実に手引きした者が居ます…が、ジンが単体で行えるとは思いません。 そして、帝国の皇帝がアンデッドキングになりジンと契約している様です。 呪いの武具によって正常な思考を失っていた様です」


「呪いの武具…。 もう、退位していいかの?」


「陛下、あと十年は頑張らないといけませんね」


宰相に凄い速さで突っ込まれる。 若干食い気味に。


「あと…言い難いのですが、このミノタウロスが異世界から強制的に連れてこられたスタンピードの原因で、その隣の女性は妖精で多分間違って送り込まれたのかと…」


「もう、これ以上聞きたくない…。 宰相が変わりにやってくれ」


「駄目ですよ陛下? 王妃様に言いつけますよ」


ウッっと唸る陛下。 尻に敷かれる王ってどうなの。


「騎士団が向かっている先は、私達の向かった事の無い街なので転移は使えないので直接向かいます。 帰りは全員転移で帰ってくるのであまり時間はかけません」


「いや、そういう問題でもなくてな? なにをさらっと転移とか言っとるんじゃ」


「陛下? もうマーガレット伯爵の事なんですからいちいちリアクションしてたら早死にしますよ」


宰相は俺をなんだと思ってるんだ。 ただの子供だぞ。


…多分。


「…では、すぐに向かいます」


「分かった。 吉報を待つ」


そうして俺達はすぐに応援へと向かう事になった。

門を出たところでジャービル様が思い出した様に俺の肩を叩く。


「テイルちゃん…ヴァンパイアの事言わんで良かったんか…?」


「反対されても嫌なので今回の件の褒賞にマーガレット領におけるヴァンパイアの市民権をと思って黙ってました。 褒賞なら文句言えないだろうし」


笑いながら走り出す一同。


「ブッブッブー(頭の良い馬鹿ですね!)」


やかましいわ!


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