第百七十五話 どうしても増える仲間
俺達は先行してミノタウロスの方を優先して向かう事に。
馬車より速い人間って…。
そうこうしていると明らかに異質な気配を感じ取った。
遠くに見えるミノタウロスらしき敵影が戦斧を振るう。
それはなんとか視認できた。
しかし、その一振りで周りのモンスターを殺し、食べ始めた。
一気に駆け寄り、瞬閃で一太刀入れようとするも戦斧でガードされる。
ギロリと睨みつけて来るその眼には明らかな敵意があった。
このままミノタウロスだけと戦ってる訳にもいかないくらいには魔物も増えているので、俺以外には雑魚の殲滅を頼んだ。
「伝説のバケモノと戦える日が来るなんてね。 本当に英雄みたいだよ」
そう独り言ち、聖剣を握り向かい合う。
両者に隙は無く、先に仕掛けた方が不利になるだろう事だけは明らかだった。
辺りは戦いの音が響いている。
魔法の着弾音、剣戟で空を切り、肉を断つ音…。
魔物達の悲鳴。
聞いていて心地良い物では無かった。
「フゴォ…」
先に動いたのはミノタウロスだ。
戦斧をもう一本取り出し、構えて俺に向かって一直線に走り出す。
間を通ってしまった魔物だけで無く、空気をもが元から無かった様な勢いだ。
俺は納刀し、いつもの様に月影一心流によるカウンターを狙う。
「フゴォ…!」
今ッ!
俺が抜刀しようとしたタイミングでミノタウロスは砂を蹴り上げた。
視界が急に悪くなり、一気に優位を取られてしまう。
バックステップで一旦距離を…そう思った瞬間にはもう遅かった。
身体に感じた事の無いレベルの衝撃を感じる。
「フゴォフゴォ!」
わざと致命傷を避ける為に刃の無い部分で腹を殴打しやがった。
肋骨が何本かやられた気がする。
相手の知能が高すぎる。 どうやって倒したんだよ地球の英雄はッ!!!
確か神の血が混ざってるんだったか。
ミノタウロスは戦斧をくるくると回し始め、挑発をする。
ミノタウロスに近い所に居た魔物をある程度倒せたのか皆が駆け寄って来ようとする。
「皆! 街の方に流れた魔物を対処して! こいつは俺が相手する!」
「テイル! 無謀じゃ!」
「ぐぉぁぁぁぁぁ!」
その咆哮はこの世界では有り得ないほど強力な物で、恐怖を煽ってきた。
俺は聖剣をバッグに収め、中から伝説級武器の刀を取り出す。
色々寄って来て正解だったな。
しっかりと正眼に構え、一呼吸。
コンマの世界がとても長く感じる。 吸って、吐く…これだけで一日が終わってしまいそうだ。
ダンッと地面を蹴ったのは俺の方。
狙うは奴の武器だ。
一閃した瞬間には戦斧をクロスしてガードをしようとしている。
一瞬の間にその武器の弱点を見つけ、そこに一点集中の斬撃を繰り出す。
「ウェポンブレイクを刀でやる事になるなんてね...」
振り抜ききれなかったが、あの武器は使えないだろう。
こちらと交錯した部分は綺麗に断ち切られ、後ろで支えていた戦斧は衝撃で砕けているのだから…。
まだ諦めないのか、ミノタウロスはボクサーの様に構える。
「ブッブッブー!(二人共! ちょっとまったー!)」
ミノタウロスが構えを解いたので、俺も一旦武器を下ろす。
「ブッブッブブブー!(この子、操られてるだけだよ。 それにこの戦いは望んでないから、無理矢理でもテイムしちゃえば色んな事が解決するよ!)」
何故かめちゃくちゃ強い従魔が増えてしまった。