第百六十九話 専用物件?
商業ギルドに着いた俺達一行。
入った瞬間から凄い視線を感じる。 まるで有名人にでもなったようだ。
「テイルちゃん、まるで有名人やな?」
「ジャービル様はエスパーかなんかですか?」
受付に辿り着く事なくルオーリアさんが迎えに来る。
「マーガレット伯爵お久しぶりでございます。 名誉会長もお久しぶりです」
「お久しぶりです。 今日は物件を探しに来たんです」
「あぁ、名誉会長が言ったんですかね。 新しく貴族街に建てられた所がありますよ。 マーガレット卿に購入してもらうつもりで用意したのですけどね」
先手必勝みたいな感じだな。 俺の先を行く感じだ。
「流石ですね。 ところでアルガスさんは…」
「あぁギルド長なら昼間っからキンキンのお酒を飲んでへばってるので、頭を冷やす為に一か月分の書類と戦わせるのでしばらくは出てこれないかと」
鬼だ。
「アルならそのくらいせんと分からんやつやからなぁ」
苦笑いするしかなかった。
「では物件をご案内しますね」
そして、貴族街へと向かい、門番に通して貰う。
門番から握手求められた時はほんとに正義のヒーローにでもなった感覚だった。
貴族街に行くと見知った馬車が幾つか今にも出発しようとしていた。
みな、俺を見つけて慌てて馬車を降り、寄ってくる。
「マーガレット伯爵! 貴族街にお住みになるのですか? もし、侍女が必要でしたら我が四女を…」
などとどんどん取り入って来ようとする。
遠回しに全て断る風に保留とし、軽く受け流す。
だけどやっぱり皆握手を求めて来る。 同じ貴族だし俺より階級上の人も居たんだけどな。
「人気者は大変やなぁ?」
追い打ちをかけるのをやめてくれ…。
「到着しましたマーガレット伯爵。 こちらになります」
「結構大きいね。 でも大所帯になるしまぁ良いのかな」
「そうじゃの、皆使うのぅ」
ちょっと意味深に言い始めた。
「中をご覧になって頂いて大丈夫ですよ」
「じゃあ失礼します…。 家具が一切用意されてない?」
「えぇ、マーガレット伯爵なら用意せずとも良い物を持ち込むと思いまして。 そして、その状態でお渡しすれば格安でお渡し出来るのです」
あぁ、安く出来るならそれに越した事はないな。
だが、なんでここまでしてくれるんだろうか?
「ふふふ、商業ギルドは他ギルドより先に大きな好意を示すのです…」
あぁ、本音出ちゃったよ。
まぁ、その方がマーガレット領で色々作っても凄く待遇良くしてくれるだろうからありがたい。
「マーガレット伯爵。 ここで物は相談なのですが、正式に商会を設立なさってはいかがでしょう」
「そうしようか。 これからは酒造にも取り組むからね。 あぁ、グループ化して大きなショッピングモールなんかを作ってもいいな」
めっちゃ今にも食い付きたそうなジャービル様とルオーリアさん。
「テイルちゃんショッピングモールって言うのはなんや?」
「食べ物屋や服屋、装飾品屋などが一つの大きな施設で場所を分け合うんだ。 利点としては家賃が取れる事…なんてのもあるかな? 他にもデートスポットになる所を作ったりすれば…ね?」
「テイルちゃん! さっさと学院卒業して取り組むで!!! 資金ならウチも出すさかい!」
「抜け駆けはダメですよ。 私も出資させてください」
俺の内心は勝ったって感じだ。
「ルオーリアさん? 出資もそうなんだけど商業ギルドで出店の宣伝すれば仲介手数料取れるよね?」
「ふふふ、マーガレット伯爵はお人が悪い。 この屋敷の費用は全て商業ギルドで持たせてもらいます」
聞いたらそれでも白金貨何枚かする物件だったらしく、それを貰ってしまったので失敗が許されなくなってしまった。