第百六十八話 ヴァンパイアの使い
俺達の元に一匹のコウモリが現れた。
「ん? ヴァンパイア?」
「なに? テイル、こやつは残党か?」
マーリン様が魔力を練り、戦闘態勢に入る。
「はい、私はヴァンパイアにございます。 敵対の意はございません。 彼のテイル様に緊急のお話がありこちらまで伺いました」
ヴァンパイア達からの緊急の話…もう嫌な予感しかしない。
「敵の名はジン…彼の者を鑑定した者が言うには『混沌を望む者』 と記載があった様です。 そして、彼の者の契約者は帝国の皇帝でした。 奴はアンデッドキングと言うアンデッド種の王種らしき種族になって居ました」
ほらみろ…。
「テイル、アンデッドキングなんぞ聞いたことがないぞ」
「えぇ、俺も初めて聞きました。 新種かもしれませんね」
コウモリに化けたヴァンパイアが声をかけてきた。
「テイル様、我々ヴァンパイアは血を望む事の無い種族に進化しました。 出来れば我々を庇護していただきたく…」
まぁ、血を望まない種族なら良いだろう。 というか、それってヴァンパイアではないのでは…?
一応陛下に聞いておくか…? いや、うちの領で働いてもらおう。
「分かった。 俺の領に来てもらってそこで俺達の手伝いをしてくれると言うのであれば迎え入れよう」
「良いのか? テイルその様な約束をしてしまって…」
「そうです、お父様…陛下に判断を仰いだ方が…」
うーん…。 居ないとは思うがヴァンパイアだからと差別が起こったら庇護を約束した俺の顔が潰れてしまう。
彼らが血を望まないのなら、もうただの魔物や魔族ではない極めて人族に近い存在だろう。
「いや、俺の考え的にはまだ報告しなくていいかな」
「理由があるのじゃな?」
「ま、まぁ」
(テイル、面倒なだけじゃろ)
マーリン様にはバレていた。 仕方ないよ、あんなに連続で謁見する事になったんだから。
ヴァンパイアと言う強力な存在を味方に付けたとなれば今度はどうなるか…。
「まぁ、これも半分はフォンドニア嬢の仕業じゃろう?」
「えぇ、そうですわ」
「なら夫のテイルが責任を取らんとなぁ?」
若干威圧して来るマーリン様…。 いつも謁見の巻き添えにしているせいだろうか。
「まぁヴァンパイア一族は迎えに行くから、一旦キング達に報せに行ってもらえる?」
「その必要は御座いません。 我々の種族は人族で言うテレパシーの様な念話が可能です」
えぇ…、どこで匿うか…。
まだ王都の家を買いに行く時間も無かったし、公爵邸しか住めないぞ…。
「テイルちゃん、ええ物件あるで? 今から商業ギルド行こか」
にんまりと笑ったジャービル様。 賢者って怖いな。
「あ、そうじゃ。 テイル達に関しては領地持ちの貴族になった上に英雄じゃ、だからもう残すは卒業試験のみで授業は出んくてよいぞ。 実技試験も無しじゃ。 筆記と面接だけじゃな」
このタイミングで言うの? 勉強の事忘れて居たかったよ。
「寛大な処置ありがとうございます」
「いや、本当なら問答無用で卒業で良いらしかったが、テイルを甘やかすなって言ったら試験が行われる事になったわい。 さ、皆で商業ギルドに行くぞ!」
このオッサンいつかぶっ飛ばしてやる…。