第百六十話 弄ばれる
「とても美味しいのね。 地球の料理…」
「あぁ、これを領地で流行らせる。 その為に米とか色々栽培しなきゃいけないから大変になるぞ」
急に笑顔になるマキナ。 何が可笑しかったのだろうか。
「テイルって、意外と食い意地張っててかわいいね?」
男に可愛いは禁句だぞ!
なんか負けた気分になる。
「せめてそこは格好良いって言って欲しかったよ」
「戦ってる時と錬金術をやってる時以外はやっぱり年下の男の子なんだなぁって思うばかりよ?」
む、俺ってそんな子供っぽいだろうか。
「そんな事ないぞ。 俺だって男だし! もうすぐ学院だって卒業なんだからさ」
「あら、私はもう一個上の貴族学院に進学したけれど? じゃあ私はまだ子供ね? 大人なテイルなら子供の我が儘くらい聞いてくれるのよね?」
なんだこのズルい発言は。
「え、大人だからって子供に甘やかしたりはしないぞ? まぁ、我が儘は聞いてはあげれるだろうけど」
ニヤリと笑うマキナ。 こんなキャラだっけ?
「今日だけ…。 いや、デート中だけで良いから私を一番に扱って? それと指輪を買って欲しいな。 一番最初に」
「んー。 最初のはまだ分かるけど指輪に関しては皆一緒の方が良いだろ」
今度はむすっとした表情になるマキナ。
「私が一番初めに婚約したのよ? 皆あとからどんどん増えてきて…。 ズルいじゃない」
それもそうか。 婚約してから一度もデートしらしてなかったわけだし。
「分かったよ。 でも、今日渡すのは正式な指輪じゃないからね」
「わかったわ」
女心って難しい…。
(そうですよ? 女は繊細なんですよ?)
だから盗聴をするな駄女神が!
(駄女神とは失礼な! 私は偉い神様なんですよぉ?)
知ったこっちゃない! ノイズの魔法を発動する。
これは通常なら認識阻害の一種で、サーチなどにノイズを掛け、見えなくする物だ。
しかし、消費魔力が多すぎるので滅多に使われる事は無い。
「テイル…貴方、今なんの魔法を使ったの?」
「いや、単に魔力を巡らせただけだよ。 気にしなくて良いさ」
かなり怪しまれているけどなんとか誤魔化せたようだ。
だが、今度はバチリ、バチリとノイズに割り込んで来ようとする物を感じる。
覗きはダメ、ゼッタイ!
「じゃあちょっと面白い所に連れて行ってあげるよ」
「面白いところ…?」
定食屋で料金を払った後に俺達が向かったのは冒険者ギルド。
入った瞬間から視線がこっちに向く。
「受付さんお久しぶり。 ちょっと寄ったついでに冒険者カードの更新に来たんだ」
「マーガレット伯爵!? は、はい。 お預かりします」
冒険者ギルドは救世の英雄である勇者の登場に驚きが隠せていないようであったが、誰もこちらには向かってこない。 良い事だ。
「お待たせしました。 魔王軍幹部の複数撃破、魔王討伐、魔神王討伐の功績も含めて世界初のSSSランク冒険者に昇格が決まりました。 これが、冒険者カードです」
鑑定したら素材が希少金属の合金だった。 これなら世界に一つしか作れないだろうな。
錬金術師は作れるけど。
「ありがとうございます。 あ、この建物の屋上を借りたいんだけど、ギルマスに許可を…」
「ギルマスの許可なんて要りません。 どうぞ使ってください。 あの魔道具もご自由にお使いになって構いませんので」
「ありがとう。 じゃあ上に行くね。 貸し切りにしておいてくれると嬉しいな」
受付嬢は綺麗なサムズアップをしていた。 任せろって事かな。
さ、反応が楽しみだ。