第十五話 企画会議
商業ギルドに二つを登録してから数日が経った。
僕はまた商業ギルドに訪れ、商品化の企画会議をすることになった。
とりあえず僕は意見を述べておく。
「この商品は安価に作れるので量産が可能ですが装飾を施したり、高い素材で作成したものを貴族向けに制作するとより一層売れ行きが伸びるかと思います」
「せやな、その方がええわ、それはワイも思っててん。 ただその貴族向けの物をどういう素材で作るかが問題やなぁ」
「でしたらミスリル鋼はどうでしょうか? あれなら加工も簡単ですが高価な材質ですし」
ギルド役員のルオーリアという男が助言をくれた。
「たしかにそれならええな。 ついでにシリアルナンバーを刻印するとかどうや?」
「いいですね。 それなら特別感がありそうです」
僕は素直に関心して言葉に出してしまう。
するとアルガスに客が来たようでアンナが呼びに来る。
「ほな、ちょっと行ってきますわ」
少し会議は止まってしまうことになったのでルオーリアに改めて挨拶をすることにした。
「あ、ご挨拶が遅れました。 僕はテイル・フォン・マルディンと言います。 一応いつかは家を出る身ですので、気軽にテイルと呼んでください」
「お初にお目にかかります。 ルオーリアです。 一応商業ギルドにて専務を務めさせてもらっています。 相談役みたいな物なのでいつでもお声かけください」
「わかりました。 ありがとうございます」
「よくこのような娯楽をご考案されましたね。 私では考えも付きませんでした」
ルオーリアは深く関心したように俺を褒めてくれる。
「ありがとうございます。 僕も良く考え付いたものだと思いました。 この遊びは老若男女問わず遊べますし、ルールも改変がしやすいので汎用性が高いのではないかなと思います」
「そうですね、でしたら類似した物を作ることも容易かもしれませんね。 真似される可能性もあったので商業ギルドを介して正解だと思いますよ」
なるほど、その可能性があったのか。
僕は疑問に思ったことをルオーリアに聞いてみることにした。
「この二つの商品の製作者は公表されるのですか?」
「えぇ、製作者の名前は公表されます。 任意で製作者の名前を非公開にもできますが、権利の問題もあり、あまり推奨は出来ません」
「そうなのですね。 ありがとうございます。 今後の事もあるし公表しておくことにします」
えぇ是非そうなさってください、とルオーリアは優しくこちらに微笑んでくれる。
とても物腰が優しくどこか公爵閣下に雰囲気が似ている。
それが原因かは分からないがとても親しみやすい。
「待たせたな。 ほな続きしよか」
会議が再開されたので僕は兼ねてより考えていた魔道具を制作する旨を伝えることにした。
「この商品以外にも商品化出来ないか考えている物があって制作するつもりなのですが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫やで、基本的に登録は同じ様な商品やなければ通るはずやから」
「ありがとうございます。 冷蔵庫を作成しようと思っています」
「レイゾウコ? なんやそれ」
疑問は当たり前だ、この世界にはそんな物存在していないのだから。
「常に冷たい温度で状態を保ち、飲み物や食べ物を冷やしておける装置のことです。 僕が考えました」
夢の男の知識です。 ごめんなさい。
「なんやそれ! 革命やないか! そんなん誰も考えつかへんかったで!」
そんなに驚く事なのだろうか? 僕には夢の男の記憶があるから当たり前の様に感じてしまう。
この世界は非常に生活レベルが低いのだ。 改善をしないと自分の身が持たない。
そしてこの商品は確実に作成に取り掛かった方がいいと思った。
「まぁ、その商品はとり急いで作る必要はないと思うので、僕が学院に入ってから制作します。 その為に魔石が必要なのですが、購入することは可能でしょうか?」
「大丈夫やで、ただその商品の制作に関しては個人的に噛ませてもらってもええか? ワイが出来ることと言えば魔石の提供やな。」
「本当ですか!? 僕としては大丈夫ですが、ギルドとしては大丈夫なのですか?」
僕は不安に思ってついつい聞いてしまう。
「大丈夫やで、その辺の法に関しては熟知しとるから不正にはならへん様にやるって。 それに商人として個人的に噛むのはしゃーないやろ?」
「なら大丈夫です、僕からは異存はありません」
ありがとうと二人から感謝される。
たまにはこういうのも悪くはないかもしれない。
そして僕は早々に帰宅し、魔道具の設計をゆっくりと練り始めるのだった。