第百五十四話 王族
「ふむ、皆の力があってこそだったのだな? 良いだろう。 宰相、全員に欲しい物をまとめさせろ。 そして、近日中にどうにか揃えよう」
「畏まりました」
あの問答で俺に全責任のしかからなくて良かった…。
あれ、マーリン様とミザリア母様なんか笑ってない?
「だが、何度も言う事になるとは思うが此度は世界の悪の根源を絶ってくれたこと心から礼を言う」
陛下が頭を下げた。 それと同時に集まってきた貴族や宰相が俺達に向かって深い礼を取る。
騎士達に至っては王国騎士流の最敬礼の形だ。
「陛下! 頭をお上げください! 私は当然の事をしただけで…」
「皆! 聞いたか! この勇者は世界を救う事が当たり前と言った。 貴殿らも余もマーガレットに足を向けて寝る事は出来んであろうな! もし、マーガレットへ何かした者が居たら、それは世界への反乱だ。 その者の家は無くなると思え!」
これが言いたかっただけかこの陛下!!!
「陛下、ではその件はここまでにしましょう。 新たな勇者で世界の英雄であるマーガレット伯爵に、伯爵程度の器で終わらせる訳ではないのでしょう?」
ふぅ…。 と溜息を付く陛下。
「それは余も思って居た。 だが、異例の事だから既存の爵位なんぞでは足りんじゃろ。 格としては大公よりも上で良いくらいだろう。 新たに専用の爵位を立てるので、それに関しては時間を取ろう」
「承知しました」
では…。 と陛下が一呼吸置く。
「此度は祝勝パーティを行う! 今から七日後にマーガレット一行の祝勝パレードも行う! 意義がある者は前へ出よ!」
誰も前に出ない。 陛下は王としては威厳あるからな。
「では宰相。 その様にしてくれ」
「はっ!」
「これにて謁見『は』以上とする」
あ、これは俺陛下に捕まったな。
順番に退場して行き、大きめの部屋へと案内される。
全員が入っても全然余裕のある部屋だ。
待っていると、ノックがされる。
「マーガレット伯爵様方失礼します。 王族の方々がお見えになりました」
「問答無用で通してください!!!」
ははは! と笑いながら入ってくる陛下。
「皆、入ってよいぞ」
「先日の謁見以来ですわね。 貴方方の雄姿は是非この目で見たかったですわ」
相変わらず美しい王妃様だ。
「僭越ながら...。 私は第二王妃のユリナ・エル・アストレアでございます。 かの勇者様にお会い出来て光栄にございます」
あ、陛下も何人か奥さん居るのね。 それはそうか。 サリィは妾の子って言ってたっけ。
「第一王子のアルス・エル・アストレアでございます。 前回の謁見は他国に留学に赴いていたのですが、今回は緊急で帰国致しました。 お目に掛かれて光栄でございます」
「先程ぶりです。 先は失礼な態度で申し訳ありませんでした…」
ジュエル第二王子殿下はさっきの態度が侍女さん達から宰相伝手で陛下に伝わったんだろうな。
可哀想に。
「私は第一王女のガーネ・エル・アストレアにございます。 サリィの事をどうか幸せにしてあげてください…」
「お初にお目に掛かります。 第二王女のヒスイ・エル・アストレアですわ。 以後御見知りおきを」
「あとは妾の子や、公爵も居るがそれは良いだろう。 いずれはしっかりと挨拶はさせるが」
陛下が頭を抱えている。 何かあるのだろうか?
「すまない、顔に出てしまったな。 如何せんお前に会いたいと言う奴が多くてな…」
「あぁ、なるほど。 友好的にしておけば間接的に王家に守ってもらえると思ってる方も居るって事ですね」
「その通りだ…。 申し訳ない」
ここで、急にミザリア母様が立ち上がる。
「陛下、お久しぶりですね。 前に話しそびれたと思いますが、アストレア王国の王家は地球の天使の血が混ざって居ます」
一同が顔を見合わせ硬直する。 空気が凍るとはこのことだろう。
「私からも説明しましょう。 この世界が崩壊しそうだった事が過去にもあります。 そしてその時に、私が地球から派遣した天使がここに種を残した…。 それが貴方方です」
フォンドニア嬢が話に割り込んでくる。
「フォンドニア嬢…? 一体?」
陛下混乱してるよ! フォンドニア嬢もしたり顔してるし?
そして、フォンドニア嬢は自分が何者か、そして、地球での俺との関係などを話していく。
「いや、全て把握したが…。 理解が追いつかんぞ…」
でしょうね!!!