第百五十二話 またもや謁見
王城へと向かった俺達。
「マーガレット伯爵! お話は聞いておりますので皆さんでお通りください!」
「うん、ご苦労様!」
門番ってこんなにすんなり人を通して良いのだろうか…?
マーリン様もガイル様も苦笑いしてるし、あのジャービル様に至っては頭抱えてる。
「マーガレット伯爵。 ここからは私とフォンドニアにてご案内致します」
サリィが侍女として働こうとし始める。
「いえ、その必要は御座いませんよ。 私達にお任せください」
城付きの侍女達に阻まれてしまう。
「ではマーガレット伯爵御一行は謁見の間までご案内致します」
とても綺麗な所作で案内をしてくれるこの侍女。 なんか…気になるな。
「そこのメイドさん? 貴女、精霊ね?」
「…お答え致しかねます」
「大丈夫よ。 私も大精霊だし、このナナちゃんはエルフですもの」
完全に観念した様な侍女は重い口を開こうとする。
「待て。 僕の命で彼女の存在は隠しているんだ。 貴女はどなただろうか? 大精霊とは聞こえたが、テイル殿の一行にその様な者が居たと言う話はないが?」
ジュエル第二王子殿下だ。
「お初にお目に掛かります。 私は水の大精霊のミザリアと申します。 アレクの妻であり、テイルの実母にございます」
「なっ! その様な話は聞いていないぞ! どうなっている…」
「殿下、俺もつい最近知ったのです。 父も封印されていましたから、報告が出来なかったのでしょう」
なんとか納得しようとするジュエル第二王子殿下。
「事情はなんとなく分かった。 ならば、答えよう。 彼女はドライアドだ。 大精霊では無いが人化は出来る位の階級の精霊だ。 私の保護の元、王家に仕えている」
「なるほど。 では、ドライアドのメイドさん。 このお水を飲んでみて?」
ミザリア母様が渡した水は聖気を放っている。 いわゆる聖水の類なのだろうか。
「これは…。 僭越ながら頂きます」
「えぇ、貴女も複数の世界を跨いで来た同胞ですからね。 これくらいは」
あぁ、やっぱりあのドライアドで間違いは無いのか。
「あぁ…テイル殿…謁見の時にもう一度詳しく聞かせてくれ…」
完全に疲れ切ってるジュエル第二王子殿下…。
気持ちは痛い程わかる。
「もちろんです」
背中を丸めて謁見の間へと歩いていくジュエル第二王子殿下。
「アレもまだまだ子供じゃな!」
マーリン様…。 そろそろ不敬で首落とされないかが心配だ。
「着きました。 今確認を取りますので少々お待ちください」
謁見の間の扉を守る騎士の方に確認を取る。
一人が中に確認を取りに行き、すぐに出て来た。
絢爛豪華な観音開きの扉が開く。
「マーガレット伯爵御一行のご到着! 前へとお進みください」
その言葉に従い前へと進む。
中央より若干前にて、跪いて並ぶ。
「代表として、テイル・フォン・マーガレット伯爵よ三歩前へ」
「はっ!」
久々に宰相をちゃんと見た気がする。
周りには貴族総出状態だ。 普段見かけない辺境伯まで居る。
「貴殿は異世界より更に召喚された魔王だけで無く、魔神王まで討ち取ったとの事。 相違無いか?」
「はっ! 皆で協力し、魔王を吸収した魔神王を討ち倒しました。 また、龍神王のご協力の元で我が父アレク・フォン・マルディンも救出致しました」
あれ?陛下の顔をチラッと見たら凄いしたり顔なんだけど。
嫌な予感がするぞ…。