第百四十九話 休憩
そんなこんな状況報告の為に王都へと向かう事になった俺達。
「サイドや陛下…他の王族、貴族達にどのような顔で会えば良いのか…」
「アレク父様は何も悪い事をしていませんから、大丈夫ですよ」
「とは言ってもなぁ…」
不安に推し潰れそうなアレク父様を見て俺は思わず笑ってしまう。
「ん? テイル…何が可笑しい…」
「いや、それは騎士を束ね幾つもの戦場で戦果を挙げたお主とは思えん言動で、流石のテイルでも耐えれんのじゃろう」
さ、流石のテイルってなんだよ! 俺をなんだと思ってるんだ。
「そうですね、アレク…。 ちょっとダサいですよ?」
ミザリア母様!? それは追い打ち…。
「あ、あの…アレク父様…。 これどうぞ」
以前皆に配ったブドウの果実水だ。
これをベースに質の良いワインを造れないかも考えている。
「なんだ! 甘いぞ!」
「私も一口頂いても?」
構わんぞ。 と流れる様な所作で言い水筒を渡すアレク父様。
こういう一つ一つの動作が恰好良いのは憧れてしまう。
「あら! なんて美味しいの! 砂糖は高級なのでは?」
「通常の砂糖とは違う製法で作った甜菜糖という、新たな砂糖です。 帰ったらギルドに登録して、自領の特産品の一つにしようかと」
砂糖!? と馬車内の全員が反応する。
それどころか、三台で王都に向かっているのだが後続の馬車の御者まで聞こえてしまっただろう。
ジャービル様に聞こえてないと良いなぁ。
「アレク御当主、この辺りで一旦馬を休ませたいのですが宜しいでしょうか?」
「あぁ、構わんよ。」
「ありがとうございます」
馬車が三台、道沿いのちょっとした広場に馬車を停める。
馬車専用の休憩場の様な物だ。
「テイルちゃーん? 砂糖がどうのって聞こえたんやけど~?」
俺はアレク父様の後ろに隠れる様に移動する。
流石に父様なら庇ってくれるだろう。
「アレク~? そこ退いてくれへんか~? テイルちゃんとオハナシがしたくてなぁ?」
「いやぁ、ジャービル様…息子は疲れ切っておりますので…ご勘弁を」
「ふぅん? せや、アレク~? アンタあの侍女の子…」
「テイルを頼みます」
アレク父様? 子供を賢者に売ったな???
「アレク? 貴方、ちょっとお話があります」
全員その言葉の鋭さにヒヤッとした事だろう。
その隙に俺はゆっくりとその場を後ずさろうとする。
「逃がさへんで?」
俺の真後ろにジャービル様が居た。
神様は何でこんな人を賢者にしたんだ…。 恨んでやる!
(やかましい!)
え? なんか聞こえたんですけど!?
「今、何か聞こえませんでした?」
「いや? なんも? で? 砂糖って?」
小一時間ほど、問い詰められたのは言うまでもない。
そして俺のマジックバッグからはブドウの果実水は消え去った。 今頃は皆のお腹の中だろう。
神様の理不尽!!!
(や、やかましい!!!)
…え?