第十四話 娯楽開発
魔法学院の入試も近づいてきており、僕はそろそろ勉強を始めた方がいいかと思い参考書を手に取る。
ペラペラとめくりながら読んでいくが全て覚えてしまっていたんだ。
多分筆記は受かるんだと思う。 問題はどのレベルの魔法を使用しても常識外れにならないかだ。
これは追々考えて行こう。
夢の男の世界には娯楽が沢山あったよなと不意に思う。
「なにか簡単に出来そうな物はあるかなぁ...」
ここで幾つかのテーブルゲームに思い至る。
ありきたりかもしれないが、将棋とリバーシを作ろうと考え着いた。
将棋はルールを詳しくは知らないがアレンジしても遊べるだろう。 オリジナルルールなどもありかもしれない。
もっと沢山の物を用意しても良かったのだが、一気に用意し過ぎてもプレイヤーが混乱するだけだ。
ということで早速取り掛かる。 街で木材を買い盤と駒を作る。
夢の男は良くDIYをしていた為か僕も手際が良い気がする。
将棋の駒にアストレア公用語で文字を掘っていく。
主に通常の将棋と同じ物を使う。
完成した作品で遊ぼうと思ったが、周りには誰も居ない。
数分考えたのち、今は商業ギルドに登録しに行くことを考えた。
将棋とリバーシを自家製のマジックバッグにしまい、門を出る。
今日は完全な私用なので馬車は使わずに徒歩で行く。
同じ様な道を何度も通る。 何度も、何度も...。
「あれ? ここ、さっきも通ったぞ?」
そう。 道に迷ったため二時間もかかったのだ。
普段外に出ないし仕方ないよね?
商業ギルドに到着し受付へと向かう。
なんとも広い内装で、さらに倉庫まであるそうだ。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で?」
受付嬢が声を掛けてくれる。
「こんにちは。 商品の登録をしたいのですが...」
「かしこまりました。 では此方にご記入の上商品のご提示をお願いします」
テーブルの上に将棋とリバーシを出す。 受付嬢はなにかわからず首をかしげている。
「これはなんでしょうか...?」
受付嬢が聞いてくる。
「こっちは将棋、こっちはリバーシといってちょっと時間は掛かりますが一対一で対戦する遊びですよ」
「なるほど、登録の際に必要になるのでルールや説明をお願いします」
「では、説明させていただきます。 あ、紙書き終わりました」
かなり丁寧な字で書いたから確認も楽だろう。
「綺麗な字ですねぇ。 はい、確認しました。 では、ご指導お願いします。」
この人遊ぶ気なのだろうか?
ルール等を教えていくと受付嬢は物凄い速度で覚えてしまった。
「覚えるの早いですね(カチッ)」
「仕事ですから(カチッ)」
「大変ですねぇ...。 王手!」
「負けました...。 十戦十敗...」
将棋で勝てなくて悔しがってる。
するとギルドの扉が開きフレンドリーな中年が入ってくる。
「よぉ~アンナちゃ~ん! 帰ったで~...って何してんのや?」
「こちらのテイル様の商品です。 先ほど登録したのですがこれは凄いですよ。 マスターもやってみますか?」
この人がギルドマスターなんだね。 この国で西の訛りをしているのは大体商業国家サカイの国の人間だ。
黒髪黒目、あまり身長が高くないことから見てもこの人はサカイ人なのかもしれない。
「ほな、教えてもらおか。 あんちゃんも少し見てってや」
「あ、はい、僕の名前はテイル・フォン・マルディンです。 以後お見知りおきを」
「ワイはアルガスっちゅうもんや。 よろしゅうなー」
そして受付嬢のアンナによる将棋とリバーシの講義が始まる。
小一時間が経過した。 結論から言うとアルガスは物覚えがアンナ以上でアンナをボコボコにしていた。
「なんやアンナちゃん、手加減したろか? にしてもこれおもろいな...」
「ありがとうございます! じゃあ僕は今日はこの辺で...」
後に僕が起こす革命など、今は誰も知る由もなかった。