第百四十六話 かわいいもの
「テイル様…。 精霊と血が繋がっているって…」
「うん、そうみたいだね。 ステータスには表示されてなかったけど、ハーフみたいだね」
驚いて声が出ない様子のメイカ。
それはそうだろうな。
「ブッブッブー(主様が精霊の血が混ざっている事くらい皆分かってると思ってました)」
「え、アルは分かっていたのかい?」
「ブッブッブー(分かっていましたよ?)」
アルってなんでも出来るんじゃないの…?
俺より強い…とかは無いよね?
「流石は王に連なる系譜の一角兎ですね。 とても素晴らしい能力をなさっています」
「これが王一角兎だと言うのか…。 確かに一角兎と大きさと瞳が違う気がするな…」
父上も一角兎を見た事があるのか。
戦で名を上げた事のある父上ならどこかで見かけても可笑しくはないか。
「父上も良ければ撫でてみます…? ミザリア母様も…」
「良いのか?」
「よろしいので?」
あ、これアルの魅力に惹かれちゃってるやつだ…。
「ブッブッブー(主様のご家族ならば全然良いですよ!)」
「あら、この子、とてもいい子ですね」
「ふむ、なんと言ってるのだ?」
しばらくアルと父上達が会話をしながら撫でまわしている。
「あの…テイル様…私も…アル様を撫でても…」
「ま、まぁ良いんじゃないかな…」
俺より人気になってない!?
「ブッブッブー(撫でられるのは幸せですねぇ)」
「あらまぁ、可愛いですね。 私も一角兎をテイムしたいですわね」
精霊ってテイムとか使えるのか。
「テイル? 精霊でも上位精霊や大精霊の冠が付く者であれば人族の使う魔法は使えますよ? 逆に言ってしまえば精霊の血を引く貴方ならば、精霊にしか使えない魔法も使えます」
「そうなんですね。 でも、身近に精霊が居なくて教えて貰うことは出来なさそうです」
少し考える様な表情をするミザリア母様。
「貴方から精霊の血族の気を感じます。 エルフの方と関わりがありますか? エルフであれば風の精霊の魔法を使える者も居ますよ。 水に関しては私が教えましょう」
「良いのですか!?」
「えぇ、もちろん。 私の大切な息子ですもの」
父上に軽く視線を落とすとアルに舐められて楽しそうにしていた。
メイカがちょっと引いている。
「テイルよ、『父上』なんて堅苦しい名ではなくミザリアの様に『アレク父様』とでも呼んでくれないか?」
アルの唾液でべとべとになった父上が微笑みながら言ってくる。
とても嬉しい。 がその今の唾液まみれの父上に言われると笑いが込み上げて来る。
「ん? なんだ、テイル? 何が可笑しい?」
「だってアレク父様がべとべとにされていて…。 もう、面白くて…」
お腹を抱えて笑い出すミザリア母様。
「アレクは昔から可愛いものが好き過ぎて、戦場にぬいぐるみを持って行くくらいなんですよ?」
父上の印象がゴロっと変わってしまったよ!!!