第百四十三話 父上と精霊
「父上!!!」
呼びかけても全く反応は無い。
「テイル様! しっかなさって下さい!」
そうだ、魔神王との繋がりや呪縛は消えているんだから生きているはずだ。
ならばこの氷は生命維持装置的な物なんだろう。
じっくりと鑑定する。
『鑑定不能』
現れるのはその表示だけだった。
この表記がされると言う事は、この氷が自分よりも格段に格上の者が掛けた術か魔道具である事が分かる。
鑑定だけでは全く分からなかったので直に触れてみる事にした。
「全く冷たくない…。 これはなんなんだ?」
「ブッブッブー(精霊による強力な術に似ていますよ)」
「精霊…。 高貴な種族が邪神王に仕えていたっていうのか…」
確か精霊は上位の存在になると下級神と呼ばれる場合もある。
だが、そんな存在が果たして…。
「貴方が『この世界』の新たな勇者なのですね」
入口の方から現れたのは美しい少女だった。
「君は一体?」
「申し遅れました。 大精霊の一柱である水の精霊です。 地球に居る私の分体には種族名があるそうですが」
「まさか、ウンディーネ…」
「よくご存じでしたね。 ヒントを出し過ぎましたでしょうか。 アレクの事を封じているのは私です」
やはり精霊の力だった。
「魔神王に従わされたのですか?」
「いえ、ご存じないかもしれませんので言っておきますが、私とそこのアレク...貴方の父は婚姻関係にあります」
驚愕の事実に俺もメイカも無言になってしまう。
「ブッブッブー(この精霊は嘘をついていないけど、何か隠してるよ)」
だろうな。 単純にそんな話をするなんて思えない。
「私がアレクを封印したのは魔神王に完全な受肉をさせないためでした。 魔神王はその更に上を行く力を使い彼に成り代わってしまいましたが。 そして、そこの神の祝福を受けし者…王一角兎でしたか。 その子の言う隠し事とはこのことです。 ですが、重要な事がもう一つあります」
アルの声が聞こえるのか。 流石は大精霊の一柱か。
「ならば、父上のその封印とやらを解いてください」
「でしたら、これを解除する事を貴方への試練と致します」
急に何を言い出しているんだ!?
訳が分からないぞ。 まぁ、結局はやるしかないんだろうな。
目に魔力と魔素を集め、集中し、鑑定を行う。
その時、鑑定が上限を突破した感覚になり、先ほどまで見えなかった封印が見える様になった。
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『大精霊の封印』
素材:聖気、神気、魔力。
主に聖気を用いて氷を具現化した封印結界。
素材を全て大気中に霧散させる事で強制的な解除は可能。
中身:アレク・フォン・マルディン(本人)『状態:休眠(生存)、封印』
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これなら余裕で解除出来そうだ。




