第百三十五話 序魔神醒
俺達はマルディン領に入った瞬間驚愕した。
領民が一人として居ないのだ。
驚きながらも歩き進んでいると、前から父上の姿をした魔神王が現れる。
「テイルよ。 何故帰ってきた?」
「分かっているんだろ…? 魔神王?」
「ふふふ、流石だな」
「この街の人々はどうした? 父上もどこにいる!」
「この街の住人は魔王の召喚に使う為の魔神を生み出す為の贄になってもらったよ。 だから彼らは死んだ。 そして貴様の父は、マルディン家の地下室に捕えてある」
何という悪逆。 これが魔神王。
完全なる悪神ではないか。
「わかった。 俺はこれから貴様を討つ」
「そうか、ドーラも無しにか?」
ボロボロになったドーラが急に現れたマントの男から投げ渡される。
「この程度の力ならもうねじ伏せれる」
「サリィ! ドーラに一番効力の高い回復を! そして三賢者で儀式にしてピュリフィケーションをしてこのドーラの呪いを解いて下さい」
敬称なんてもう付けている余裕はなかった。
「ほう、傷ついた者をまた戦わせるか。 存外鬼畜よ」
「うるさい!」
半分手の打ちようは無い。
「神級の力を三柱も持って蹂躙しようとするのなら私も良いですよね? テイル?」
これは思わぬ誤算かもしれない。
「どこまでやれるか分かんないけど、解放しちゃっていいよ地球の最高神様」
「やだ、先輩! その名前で呼ばないで下さい!」
一気にフォンドニア嬢から漏れ出ていた僅かな神気が膨大な物になり、姿が変わる。
それは『俺には』美しく神々しい姿で、山田の顔をした女性だった。
「貴様! 神だと!? 地球の最高神とは何だ!」
「魔の者でも疑問を持つ事は良い事です。 答えましょう。 全ての神話を統べる者と言う事です」
「全ての神話を!? そんな強力な存在が自ら次元を超え、我らと敵対する為にやってきたと?」
「えぇ、全ては先輩の…今はテイルでしたね。 彼の為です。 彼を守る為ならば悪を滅します。 ついでに結婚もします」
この発言には全ての者が怖がっていた。
言葉の一節一節に神気を乗せている為に圧が強すぎるのだ。
「え? お前俺の事好きだったの?」
「おい、テイル! 知り合いとは言え神にお前はいかんじゃろ!」
「良いのですよ。 えぇ、お慕いしていましたよ?」
あれぇ? 俺知らなかったんだけどなぁ?
周りの女性陣から痛い視線が飛んでくる。
「まぁ、フォンドニア様とのご結婚も約束されていましたけど前世でなにがあったのかお聞きしますからね」
あぁ、終わった。 質問攻めになる奴だ。
魔神王も可哀想な目でこっちを見るのをやめてくれ。
「では、アレスディアの魔神王、そして異世界の魔王達よ。 改めて私が審判を下します。 これはアレスディアの最高神の許可もあります」
「させんわ!」
「メイカ!」
「はい!」
息を合わせて縮地で踏み込み剣で押さえ込む。
魔神王の一撃は二人掛かりでも潰されそうなくらい重い。
そして、横から入った魔王の蹴りであっさりと俺とメイカは吹き飛ばされてしまう。
もう一人の魔王の『理の結界』によってフォンドニア嬢は封じられてしまい、神の力をも出せなくなってしまった。
マーリン様がすっと懐から虹色に光り輝く宝玉の付いた杖を取り出し。 構えを取り直した。