第百三十四話 異世界なる魔王の召喚
「んで、テイルちゃん、伝説級武器は簡単に量産出来るもんなんかいな?」
謁見の間から去った俺達の中で真っ先に声を発したのはジャービル様だ。
商業ギルドの事がそんなに気になるのだろうか。
「最初からある程度良い純度の鉱石と、腕の良い錬金術師、それと腕の良い鍛冶師が揃えば容易です。 揃わないのであればそれこそ聖遺物でしょうね?」
「条件としては簡単そうに見えるんやけどな? なんでそんなでてこぉへんのや?」
「それは、腕が良いのレベルによると思いますよ。 俺の教えた錬金術師であればある程度の鉱石からはほとんど不純物を取り除けますし」
あっちゃーって顔をしたジャービル様。
「テイルの事が規格外なの完全に忘れておったんじゃろ」
「あぁ、せや…」
俺をなんだと思ってるの。 そっと後ろを振り返ってみる。
そんな事は無いよね? 皆?
メイカやサリィ達を含む女性陣全員にも目を逸らされてしまい、それを見られたガイル様には大笑いをされる始末だった。
何という事だ。
不意にすっと脳裏にドーラ様の声が聞こえて来る。
(テイルよ。 緊急事態じゃ。 魔神王が、異なる世界から魔王を二柱召喚しよった。 しかも、生み出した魔神を触媒としている為に押さえつけるだけで手一杯じゃ。 魔神王はいつでも動ける)
は? 異なる世界!?
地球以外にも世界がある?
(っ! 分かりました! 皆に伝えて直ぐに向かいます!)
「緊急事態発生! 魔神王が別世界から魔王を二柱召喚! 魔神を触媒にしたためその力はかなり強力!!!」
一同は騒然とし、全員が息を合わせた様に身体強化を自然に使い走り出す。
…約二名おかしい力を使ってるのが居るけれど。
正確には一人と一匹。
アルとフォンドニ嬢だ。
これ、聖気と神気だよね…?
マーリン様とガイル様も気付いてるし、ジャービル様は…とっくに察してるか。
これは後から言及されるな。 仕方ないしこのお三方にだけは本当の事を話そう。
まずい、邪念のせいで壁にぶつかりそうになった。
「何をしておるテイル!」
「すみません!」
直ぐに隊列に戻る。 隊列になってるのが凄いけど。
なんで洗礼されてるのか分からないが、とても洗礼された一部隊の様な形になって進んでいる。 俺以外。
「ブッブッブー(主は人込みが苦手なんですかねぇ)」
なんでだよ。
これは確実にマルディン領に向かっている。
しかも領都の方角だろうか。
「これはまずいのぅ。 瘴気があまりない」
「確かに、魔王が二柱に魔神王と言うのに瘴気が無い。 もしかしたら、もう居ないかもしれん」
「いや、これは体内抱擁魔素量が多いのではないのではないでしょうか」
どういう事か分かって居ない一同だから説明をする。
「コントロールを極限まで行えば、体内から魔素が溢れないんです。 それに常時身体強化がされている状態ですし更なる重ね掛けも無論行えます。 これが出来る人は、錬金術と魔法の同時行使が行えます。 俺の様に」
一同が張りつめた空気になったのが分かった。
だが、それに対する打開策が無い事も無いのでそれを俺は開示する事にした。