第百三十二話 アルの本領
「うむ、良かろう。 緊急事態だ、許す」
俺は即座に呪いの解析を始める。
しかし、それはあっさりと分かった。 魔神の呪いだ。
神クラスの呪いである。
「軽く見ただけですぐに分かりました。 魔神の呪いです。 魔神王が仕掛けて来ています」
より一層と騒然としてしまう謁見の間。
ここであっさりと解呪してしまっても良いものなのだろうか。
間者が居ないとも限らないし…。
「テイルよ、この呪いを解く方法は無いのか? 賢者も居るのだからどうにか…」
「この呪い自体はすぐに死ぬものでは無く時間をかけて身体の自由を奪うものだと認識しています。 私の見解が正しければ魔神王を討伐すれば、呪いも解けるかと…」
「ふむ…。 では討伐するまで待つしかないのか…」
「一つ、方法は無くは無いですが…。 人払いをお願い出来ませんか?」
その言葉に一部の貴族がざわついた。
やはりか。
この中に間者が絶対潜んでいる。 多分この呪いは特殊な魔道具を媒介にしているはずだ。
それの使用者を見つけ、魔道具を壊すのも呪いを解く方法の一つにはなり得るだろう…。
「テイル。 魔道具は任せろ」
そっとマーリン様が耳打ちしてきた。 マーリン様も気付いていたのだろう。
これならば解呪に集中して良さそうだ。
「では、最低限の人数のみここに残ってください」
陛下と宰相、護衛の騎士団長のみ残った。 この騎士団長は国家騎士団長でメイカの師匠だ。
「今からお二方の解呪を始めますが、ここで見た事は他言無用でお願いします」
「あぁ、分かっとる」
「えぇ、分かっています」
「この剣に誓って」
その言葉を聞き俺は錬金術で身体に根付こうとする呪いを身体と分離させる。
その呪いは身体に浮き出ており、肉眼でも確認出来る。
「な! これが呪いなのか! と言うかなんなのだこの解呪の方法は!」
そんな陛下を放っておきながら解呪をどんどんと進める。
手順を順調に進めているはずなのに何かがおかしい。
違和感を感じ始めて来る。
「皆さん、下がってください」
この呪いは生きている様な、そんな違和感を感じる。
アルもそれを感じ取っているのか、アル自身から膨大な聖気を感じ始めた。
「ブッブッブー!(主のお手伝いです!)」
「なんと! 一角兎が、聖なる力を纏っておる!」
魔神王の生み出したであろう生きた呪いはそれをあざ笑うかのように王妃様と、殿下を苦しめ始めた。
「な! この呪いは苦しめる能力はないんじゃないのかよ! 成長してるっていうのか?」
「成長する呪いなど聞いたことないぞ!」
「ブブブ!(魔法を使います!)」
え? アルって魔法使えるの?
「ブッブッブー!(セイントメメモリ)」
呪いが明確に弱まってくる。
この機会を逃す訳にはいかないので、呪いを身体から弾き出す。
「ぐがぁぁぁぁぁ!」
呪いが唸った!?
「ブッブッブー!(ピュリフィケーション!)」
え? なんかアルがピュリフィケーション詠唱破棄して発動して呪いが消えたんですけど…。




