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第百二十一話 人工魔族

談笑しながら進んでいると、前方から一人の老人が歩いて来るのが見えた。


…だが一つ違和感があるとすれば高濃度の魔力を放出している事か。

あれは魔族の魔力の放出のしかたに近いはずだ。 だが前方に見えるのはただの人間。


「あれは! 宰相ですわ! 生きて居たんですのね…!」


ラファイアル嬢が叫んだ。


「ねぇ、一つ疑問なんだけどさ、宰相ってのは魔族か何か? あの魔力の放出のしかたは明らかに魔族に似ている」


「うむ、あの質感は前に対峙した魔族のものと似ておる」


「うむ、あれは魔族で間違いないな」


「そんな! 宰相は人間のはずです!」


するとジャービル様がボソッと呟いた。


「はぁ…。 初っ端からおいでなすったで...。 人工魔族(・・・・)が」


人工魔族...まさか人体実験で産み出されたものだろうか。

この目の前に居る帝国の宰相は敵と言う事なのだろうか?


「勇者御一考の皆さま。 魔王より命令を受けて皆さまをお迎えに上がりました。 私に敵対の意思は御座いません。 なんなら魔王の元へと着いたら私は魔王に殺される事でしょう」


なんだよそれ。 魔王は人の命を何だと思って居るんだ。

サーチをこの宰相に向けてのみ放つ。


「テイル! 何をしておる!」


マーリン様の必死の呼び声も俺には関係ない。

この人工魔族は人体を触媒にし、悪魔族の核を心臓と混ぜる事で出来ているんじゃないか。

その予想は当たった様だった。 この身体には二つの反応が存在する。

あの魔王の様に。


「帝国の宰相さん。 貴方を人間に戻す事が出来るかもしれません」


「その様なご冗談はおやめください。 我ら人工魔族にされた人間は魔王の餌になる為に育てられているのです。 幾ら勇者とは言え…」


「なら、駄目元で試してみても良いですか? 悪い様にはしませんので」


三賢者の方々とサリィ王女殿下は俺が何を考えているのかがもう分かっている様だ。


「分かりました。 私は今は魔封じの枷をされておりますので攻撃は出来ませんのでご安心を」


そんな事をしなくても敵意も害意も感じないので大丈夫だろう。

俺は宰相に近づき、心臓の位置に手を当て悪魔の核を分解し、体外に排出するように構築していく。

じわじわと人間本来の魔力に戻ってきた宰相。


「な! 本当に戻った…!」


これなら同じ理屈の魔王にも試せるだろう。


「流石テイルは規格外じゃな」


「人外扱いはやめてくださいよ…。 一流の凄腕錬金術師だと思っててください」


錬金術って言うのはある意味なんでも出来る最強職だからな。

と言うより農民系の天職持ちだって畑とか家畜を守る為に戦闘能力があるのだから、意外と様々な天職には知られていない効果があるのだと思う。


「あぁ…。 人間に戻れた…。 私は…助かったのですね」


ぽろぽろと泣き出す宰相。 それに寄り添うラファイアル嬢。

旧知の仲だったのだろうか。


「魔王の所へ案内してもらっても大丈夫ですか?」


「えぇ、ですがラーファ嬢が謁見の間を知っていると思うので戦闘能力の無い私よりその方がよろしいかと」


そうか、それなら避難してもらった方が良いだろう。


「では、避難をして居て貰っても良いですか? エメリーとマリアも十分戦えるから、四天王とか来ない限り遅れは取らないから宰相さんを帝都の外まで護衛してあげて貰っても良いかな?」


「はい、そうさせていただきます。 本当に助かります」


「テイル君、ほんとは一緒に行きたいけど…。 頑張ってね。 この人送り届けたらすぐに向かうから」


一つ大きく頷き、俺達は二手に分かれて行った。


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