第百十七話 戦姫
「ふむ、良くもまぁ四天王相手にやり合えたの…」
「せやなぁ、これはうちらだけやったらまぁまぁキツかったかもなぁ」
「うむ、近接がテンでダメじゃからな」
褒めてるのか呆れられてるのか全く分からない。
「勇者ですので…! この程度で止まったらダメかなと」
「ははは! 流石テイルじゃな!」
何を見てるのだろうって言う表情でこちらを見ているラファイアル嬢。
「皆、こちらはラファイアル嬢で、先ほど仲間になってもらった所なんだ」
「テイル様? 本当にそうですの? 私はサリィ・エル・アストレアでございます。 王女をしていますが王位継承権も無いのでテイル様の従者をさせて頂いております」
明らかに動揺を始めたラファイアル嬢。 これはこれは。
なんか女性陣から明らかに殺気の様なものを感じ始めて来た…。
「ラーファ・ド・ラファイアルでございます。 帝国にて公爵令嬢をしております。 天職は戦姫でございます」
ほう、戦姫は希少職で、かなり強い天職のはずだ。
魔法、剣、槍…戦に関わる事なら何でも出来てしまうと言う天職で、名前の通り女性しかなれない。
「戦姫じゃと!? ワシらが生きて来た中で出会ったのは二人目じゃぞ!」
「そうなんですか? 一人目はどちらで?」
マーリン様はしまった! と言う表情で口ごもってしまった。
俺の知っている人と言う事だろうか?
「私です…」
不意に入ってきたのは、メイカだった。
メイカが戦姫…。 それは強いはずだ…。
最近も俺の見様見真似だけで月影一心流の技も使える様になっている様だし。
「メイカ? それは本当かい?」
「はい、ですが父は女が戦闘系天職を得た事をとても嫌がっていたのです。 なので私は騎士になる事を強制されていました」
騎士になる事を強制された? どういう事だろうか。
「騎士になれば戦姫は確実に貴族になる程の天職ですしね。 自分よりも高名になられるのが困ったのでしょう。 ですが、メイカ様は天職を隠していらっしゃるので、お父上は困って居そうですね」
サリィ王女殿下が考察を話してくれた。 非常に分かりやすくて助かる。
「その通りです。 父は特に男性を優先する節がありましたからね。 強い女性を差別するきらいがあるのです」
「かの王国でもやはり差別風習はあるのですね…」
「帝国程ではないが、少なからずあるのう。 実際テイルもそうじゃったらしいしの」
確かに俺も家族に邪険に扱われたが、あれは父上に化けた魔神王と魔王の器として洗脳された挙句、悪魔を憑りつかされた兄上だったからだろう。
「よし、後の子の自己紹介とかは魔王の所に向かいながらしようか」
皆頷いた。
「まずはピュリフィケーションを発動するのですが、かなり強い瘴気が漏れてきているので魔法を儀式形式にして威力を上げたいと思います」
「なに! テイルよ、魔法を儀式形式に編集する事が可能なのか!? それでは賢者と変わらんではないか!」
「いや、多分これは俺の個人の力かと…。 誰にでも出来るものではないですよ?」
俺は地球の神から受け取った加護にて魔法の能力も上がっているので、もしかしたらそれも影響しているだろう。
西洋の神話や英雄譚では魔法などが出て来る物もあるみたいだからね。
「いや、誰にでも出来たら賢者が必要なくなってしまうではないか…」
「それもそうですね。 三賢者は一塊になってください。 それとメイカ達はこちらに集まって! マーリン様、今からピュリフィケーションを儀式化するのでそれを真似してください」
「任せろ」
「じゃあ、皆! 俺に続いて詠唱を。 我らが仰ぎし純高なる光よ、すべての魔を払い尽くせ! ピュリフィケーション!」
俺が詠唱をすると地面に魔法陣が浮かぶ。 儀式化された証だ。
俺に続いて皆詠唱してくれたので、スムーズに発動が出来た。
「ほう、凄い威力じゃの。 ワシらもやる必要性はあるのか?」
「はい、二重に掛ける事で瘴気をより抑える事が出来るのです。 さっきピュリフィケーションを何度か掛けている時に気付きました」
ふむ、と言って儀式化されたピュリフィケーションを詠唱し始める三賢者。
あれ? アルがそっちに居るのはなんでなんでしょうか…?
「ブッブー!」