第百十六話 決戦前の合流
「実に良いですねぇ…? 仲間のご登場ですか。 数でも力でも負けていますからね、ここで逃げさせて貰う事にしますよ」
そんな事をみすみす許す訳が無いだろう。
聖剣を構え、呼吸を整える。
アルキリアが逃亡するモーションを見せた。 ジリジリと確実に後退している。
そこに目にも留まらぬ疾さで縮地をし、魔核を突いた。
「月影一心流秘儀、突月・改。 逃がさないよ」
「流石は勇者…。 だが、十分に時間は稼げたでしょう…。 絶望に染まるが良い!」
ゆっくりと朽ち果てていくアルキリア。 魔核持ちはその核が壊されれば形を保てなくなる。
これは魔物にも共通している所だったはずだ。
時間を稼ぎに来たって事は魔王が強化されてしまっているのだろうか…。
「待たせたのテイル。 皆を連れて来たぞ」
「ありがとうございますマーリン様、ジャービル様…。 それに皆…。 ここからは魔王の居るだろう場所に向かいます。 下手をしたら死地になると思う。 それでも皆は来てくれるのかい?」
皆一様に頷く。
「待ってくださいまし! マーリンにジャービルって三賢者のお名前じゃありませんの!?」
「そこな令嬢よ、そうじゃぞワシらは三賢者であっとる」
「ガイルは陛下に知らせる為に遅れてくるわ」
「申し遅れました。 私はラーファ・ド・ラファイアルでございますわ。 誇り高く強い帝国貴族の一人娘でございます」
(もう着くぞ)
ガイル様からテレパシーが届く。
「嬢ちゃんよろしゅうな! てかガイルのやつ…なんや、来るの早いな?」
「かの有名な帝国貴族まで動いたか…。 ラファイアル嬢、よろしくの」
確かに帝都の入口に反応がある。 あれがガイル様だろうか。
「ん? テイルちゃんが連れとるのそれ…」
「あぁ、一角兎ですよ。 ここに来る道中でテイムしました」
「なんやて! 一角兎なんてレアなモンをテイムするなんてあり得るんか!」
驚かれてしまった。
一角兎が人に懐く事なんて超レアらしいからね。
「名前も付けました。 そういえば、この子のお陰かもしれませんが若干瘴気が薄いですね」
「せやな。 けど、そろそろこれ本格的に解呪せぇへんと進まれへんやろ」
「ガイル様が合流したらすぐに行いましょうか」
(もう皆見えとるぞー! 待っとれよー!)
あ、テレパシー繋ぎっぱなしだった。
「ガイル様もいらっしゃるのですか?」
「あぁ、三賢者と俺は失われた魔法のテレパシーが使えるのですよ。 それで連絡をしています」
「テレパシーですって!? 御伽噺の中の魔法では無かったのですね…」
かなり驚かれてしまっている。 これは錬金術師なら行使可能ってのも教えておくか。
「ちなみに言うと、賢者だけではなく、魔力操作と魔素操作を極めた錬金術師ならこの魔法使えますよ?」
「なっ!」
その場に居た殆どの人間が驚く。 だが、マーリン様だけは驚かない。
「テイルのやる事にいちいち驚いとったら早死にしてしまうわい」
「せやな、それもそうや」
ぽつりぽつりと皆納得していく。 ラファイアル嬢だけ明らかに困惑が隠せていないが。
俺は常識ブレイカーなのかもしれない…。
「おーい、待たせたのう!」
ガイル様のご到着だ! さて、兄上…待っててくださいね!