第百十一話 ラーファ・ド・ラファイアルとの邂逅
帝都へと向かう道中で明らかに盗賊と思わしき集団に囲まれている馬車を発見する。
完全に異世界のテンプレに陥っている感が否めない。
だが、ここで無視をして行ってしまうと後味が悪くなるのも目に見えてるのだ。
メイカの方を見れば頷いているのでこれは助けに行く事に賛成してくれている…って事だろうな。
縮地にて距離を詰め、交戦中の騎士に声を掛ける。
「騎士さん! 加勢します!」
「なっ! どこから…! しかし、助かる!」
俺はライトニングチェインを詠唱し、盗賊を捕縛する。
騎士達は無詠唱で魔法が放たれた事に驚いてはいるが、確実に形成は逆転している様子だ。
「ご助力感謝致します。 我らは帝国にてとある領地を任されている貴族の護衛の騎士なのですが、突如盗賊に襲われてしまい…。 失礼ですがその恰好からして帝国の方ではいらっしゃらないのですよね…?」
「はい、テイル・フォン・マーガレットです。 アストレア王国にて子爵になった勇者の称号を持つ者です」
「それは興味深いですわね?」
騎士とは別の声がする。 馬車から出てきたのは美しい銀髪の少女だった。
騎士達は片膝を付いて、剣を掲げるという帝国流の最敬礼の姿を取っている。
「興味深い…ですか?」
「あの超希少な一角兎を従え、かなり凄腕の騎士を引き連れる勇者様。 武を最とする帝国では興味深いなどと思われても致し方ないですわよ?」
「そうですか。 なら身分を明かさない方が良かったですね」
これは牽制し合っている状態だな。 相手は何故他国の貴族が居るのかも謎だし、メイカを引き連れている俺達は下手したら敵対勢力として捉えられても可笑しくは無いのだろう。
俺は貴族出身だが、流石に他国の貴族を相手にした事は無い。
「ならばこちらも身分を明かしましょうか? それで対等とは思いませんか?」
「そちらがそれで対等と思えるのであればそれでお願いします。 帝国の流儀は知らないもので」
「私はラーファ・ド・ラファイアルですわ。 一応扱いは侯爵令嬢ですわ」
気品のある礼をしてくるラファイアル嬢。 敵意や悪意は感じないので本当の事を話しても良いだろう。
メイカの方をチラリと目だけで見るとやはり頷いてくれた。
「ありがとうございますラファイアル嬢。 実は私達は魔王が帝国と手を結んでいると魔王軍の討伐した四天王に話されたので、調査に来ました」
「そう…でしたの。 やはりそうだったのですね。 私達ラファイアル侯爵家もその情報を独自に手に入れたのでその調査に帝都へと向かう予定ですの」
「ではそれが事実だった場合ラファイアル嬢はどうなさるおつもりで?」
黙り込んで俯いてしまった。 何か地雷にでも触れてしまったのだろうか。
「母の仇を取りますわ…。 私の手で!」
母親が魔族の歯牙に掛かってしまったのか。 それならば復讐心に燃えるのも頷けるな。
ならば利害の一致と言う所か。
「もし相手が魔王だった場合、聖剣を持つ私しか討伐出来ません。 それに、魔王に因縁があるのは私もなのです。 ここは手を組んで頂く事は出来ませんか?」
「そうですか。 私の相手は四天王のファルコです。 奴だけは私の手で…」
ファルコ…。 あいつならもう死んでいる。
これはちゃんと伝えよう。 その方がもう居ない敵を探し続けるより良いと思う。
「ファルコならもう既に帝国に来る道中で討ち倒しました。 最終的にはミルスと言う同じ四天王の奴に殺されていましたが」
「なっ!!! それでは私の敵は…」
「敵はファルコやミルスだけではないのですよ、ラファイアル嬢」
「えぇ…。 そうですわね…分かりました。 微力ながらお手伝いをさせて頂きますわ! それで勇者様の天職は勇者なんですの?」
「いえ、天職は錬金術師ですよ。 今回使用する聖剣も自作です。 聖剣は錬金術師にしか作れないですし、過去の勇者も錬金術師ですからね」
まぁっ! と素っ頓狂な声を上げて驚いているラファイアル嬢。
帝国は生産職は不遇以上の不遇だからな。 この反応は致し方ないかもしれないな。
なら、俺がその思考を壊していくだけだな!