第十話 冒険者ギルド
しっかりと熟睡して朝を迎えた。
朝一からギルドに向かいたいので朝食をなるべく早く済ませることにする。
早めに降りてきたはずなのに父上や母上、兄上が食卓に並んでおり、僕が最後だった。
「テイル、遅いぞ。 何をしている」
「申し訳ありません。 今日は街に下りるつもりだったので浮かれていました」
「まぁ良い、さっさと済ませて行ってこい。 ワシらの顔を潰すんじゃないぞ」
父上がこちらを睨みながら言う。
「分かっております」
母上は終始汚物を見るかの様な目でこちらをちらちら見てくる。
母上の仕打ちが僕の中で一番きつい所だ。
そしてそんな朝食も終わり、僕は街へ向かうことにした。
すると、メイカがやって来て再度僕についてくると声をかけてきた。
元々分かっていたことなので了承し、そのまま着いてきてもらうことになった。
「メイカ、来たくなければ来なければよかったのに。 父上に言われてきただけだろう?」
するとメイカは驚いた様子で、
「違いますよ。 確かに旦那様には出立の際の同行をと頼まれましたが、こうして着いていくのは私の意思です」
「そうか、わかった。 何かあったら頼むね」
「はい、畏まりました。」
馬車を出し、ゆっくりと街へ下りる。
なんだかんだで冒険者ギルドの近くに着いた。
近くで降ろしてもらい、ギルドへ歩いて向かう。
若干距離があったのでヒィヒィ言っている。 「僕も歳なのかな?」なんて独り言ちる。
するとメイカが話しかけてきた。
「いえ、テイル様はただ単に運動不足かと思います。」
「え、僕うちの騎士よりも剣が扱えるのに」
「それはあまり関係ないかと思いますが...。 成長しきっていないのでまだ体力が不十分なのでしょう」
運動はかなりしてるつもりだったんだけどなぁ。 剣術に関してはうちの騎士達とほぼ同等の鍛錬してるんだし...。
そんなことを思っていると冒険者ギルドの前へ着く。
僕は満を持してギルドへ入る。
昼間なのにがやがやとしていて、治安が悪そうな雰囲気がする。
すると一人の大斧を持った男が絡んでくる。
「ガキが女連れで何しに来てんだよ? ここは孤児院じゃねぇぜ?」
周りがそれに釣られてゲラゲラと笑い出す。
僕は大斧の男を無視し、受付へと向かう。
「いらっしゃいませ。 本日はどの様なご用件で?」
「こんにちは。 冒険者登録をしに来ました」
「かしこまりました。 では、こちらにご記入ください。 あっ、代筆の方はご入用でしょうか?」
「いえ、一通り習っておりますので、大丈夫です」
そんな会話をし、僕は用紙に記入する。
すると大斧の男がまた絡んできた。
「ここはお子様の遊び場じゃねぇって言ってんだろ!」
と大斧を振りかざしてくる。
「ギルド内での他人への攻撃は禁止されています!」
受付嬢が叫ぶが男は完全に激高しており聞く耳を持っていない。
僅かな瞬間僕は木剣を抜刀する。
そして、ウェポンブレイクという相手の武器だけを破壊する技を繰り出し、男の大斧を目掛けて振るう。
男の大斧は綺麗に真っ二つになり、男は腰を抜かす。
「な、なにをした!」
僕は無視し受付のお姉さんに用紙を渡す。
「僕は殺傷能力の低い木刀で、武器だけを破壊しました」
「一部始終見ておりましたのでテイル様に非が無いのはわかっております。 彼にはギルド活動の停止を言い渡し、そのまま衛兵に突き渡しますのでご安心ください」
受付嬢は用紙を見て名前を確認したのかすぐに名前で呼んでくれていた。
僕は腰を抜かした男を尻目に、ギルドの酒場スペースでくつろぐことにした。




