第百七話 探索開始
ついに魔王城探索の日になった。
一人は近くに人を付けるとのことだったのでメイカを俺は連れて行くことにした。
マーリン様はライラ・フォン・メーティル先生を連れて行くそうだ。 ガイル様はサリィを、ジャービル様は自分のお弟子さんを連れて行くそうだ。
「では、東西南北を各自で担当し、探索しましょう。 ある程度正確な位置を割り出せる事を願ってます」
「あいわかった。 任せなさい」
「おう、任せてくれ」
「まぁ、しゃーないからな」
「じゃあ探索開始です! 何かあったらテレパシーを俺に繋いで下さい」
おうよ と言う返答があった刹那、皆の姿が消えた。
そんな速く動かれたら前衛も涙目だろ…。 と言うか瞬間移動系の魔法使わずにあの速度で移動出来るのって本当に狂った天職だな、賢者って言うのは。
「皆やる気だね。 じゃあ俺達も行こうか」
「はい! 負けてられないですからね!」
身体強化してメイカと行動してるけど、身体強化無しでこの速度について来れるメイカも相当人外な能力をしていると思う。
もしかしたら無意識に身体強化をしているのかもしれない。
「そういえばメイカの天職って俺知ってたっけ」
「テイル様? 乙女には秘密があるのですよ?」
「あ、はい」
凄い圧を感じたので触れないでおく。 メイカも実家は貴族だし血統的には良い天職貰いやすいのかもしれないからね。
多分騎士系か剣士系の上級職だろうな。
俺の剣技ではメイカから一本も取れたことがない。 月影一心流を使えば可能性はあるけれど。
「疲れない? 大丈夫?」
「はい、先に疲れるのはテイル様でしょう?」
多分、さっき話題は触れてはいけないところだったのかもしれない。
俺達は一番怪しい帝国方面に向かって走っている。
かなり走った所で微妙な違和感を感じ始める。
「メイカ、何か感じない?」
「囲まれていますね」
嘘!? サーチには映っていないぞ!?
そうか、通常よりも薄く伸ばしているから、察知能力が落ちているんだ。
「一旦サーチを近場に絞るね」
「はい」
この反応は間違いなく魔族だ。 中には人間の反応もある。
悪魔憑きか? もうこれだけ雁首揃えてお出迎えしてくれてるって事はこちらの方向に魔王の居城があるぞと言っている様なものだ。
「出て来いよ魔族!」
「私達に気付きましたか、劣等種にしては少しは骨がありそうですね。 この手で殺したいですが命令なので、貴方は生け捕りです」
命令…。 やはり魔王軍の者か。
それ以外で考えられるのは魔神の眷属か。
「それは怖いな。 魔王にお前らの首を手土産にしてやらないといけなそうだ」
「劣等種風情がッ!!! 私は魔王軍幹部、四天王のファルコ。 貴方は殺してやりますよ」
急に放出している圧力が変わった。 これは魔力をかなり体外放出しているな。
身体強化の魔法と同じ感じがする。
それにしても魔王軍には名乗るまで攻撃をしてはいけない規則でもあるのだろうか。 出会う魔族は皆名乗っていくよな。
俺は腰にあるマジックバッグからそっとただの刀を取り出した。