第百話 顕微鏡の披露
「テイルよ。他には何か良き薬は無いのか」
「テイル、答えなさい」
「はっ! あるにはありますが…。 流行り病いくつかを事前に防ぐ薬を数種類…こちらは毎年飲まないと効果はありません。 ですので、かなり普及、宣伝に時間が掛かります」
所謂ワクチンって奴だ。 注射型じゃなくてポーション型に出来たのが幸いだった。
これが普及すれば大分変わるだろうが。
「ふむ、何故定期的に飲む必要があるのだ? 一度飲んだら終わりではないのか?」
「テイル、答えなさい」
「はっ! それですと、抗体が約一年で切れてしまうのです。 抗体と言うのは病の元となる悪質な物と戦う力の事です」
「病とは、自然現象ではないのか!?」
「答えなさい、テイル」
「はっ! 今微弱な菌…その病の元の通称ですね。 そいつらを見る道具をこの場で作ってもよろしいでしょうか?」
「よかろう。 作れ」
簡単な作りの物で良いだろう。
土台となるのは鋳鉄で良い錆びにくくコーティング剤も塗っておこう。
大まかな形が出来たら各種倍率に合わせたレンズを作る。
そして、レボルバーにレンズをはめ込みちゃんと回転するか確認する。
ここまでは順調だ。
次に鏡筒に競眼を付けそこに接眼レンズを設置する。
ステージに金属製のクリップを固定しアームの先の調節ネジは段階調節可能にした。
ガラスからプレパラートとカバープレートも作りひと段落。
「陛下、こちらが目に見えない身体への害を視る事の出来る機械にございます」
「ふむ、機械とな? 魔道具ではなく?」
「テイル、答えなさい」
「はっ! 使用したのは 鋳鉄、金属、レンズ、ガラスのみですので魔道具ではございません」
「ほぉ、凄いな。 いや、しかし試せないのはなんとも悲しい」
「陛下、お言葉ですが、試す事はできますよ」
そう、細菌を見てもらうだけならば口の中に沢山いるのだ。
無論誰の口にも存在する。
「なんと? どうやって試すのだ?」
「テイル、答えなさい」
「私やマーリン様の唾液で検証致しますと不正の可能性があると言う貴族が居るかもしれませんので、宰相から唾液を一滴頂きたく」
一滴で十分最近うじゃうじゃだからね。
「唾液? そんなものでその機械がためせるのか?」
「テイル、答えなさい」
「はっ! きっと陛下はお喜びになられると思います」
プレパラートの上にストローのような物を使って一滴唾液を流して貰う。
ちょっと乗り気でびっくりした。
さぁ、ここからが開幕だよ。
「陛下、どうぞ、ここを覗いてください」
俺はマーリン様に視覚共有を掛けてもらったので何が見えてるか分かる。
「まずは、カンジダ菌にございますね、カビの一種でございます。 性器に出る種類もございますのでご注意を。 どちらも薬は作れます」
「なんと!」
「あ、次のこちらは一番ポピュラーな黄色ブドウ球菌ですね。 この菌が増え過ぎるとお腹を壊します。 が口の中で増える事はあまりなく、日の経った食べ物や洗ってない手で増えます。 今作っている冷蔵庫の魔道具や、手洗いを活用してくださいね」
「なるほど」
あ、凄い勢いで宮廷薬師がメモ取ってる、鬼みたい…この世界だとオーガみたいな顔してる。
「結核とかの菌は見られなかったので多分大丈夫だと思いますが…」
薬師をチラ見する。
「宮廷薬師の働き次第で人員の更なる確保と給金の拡大を言い渡す。 異論は認めん」
実物見せたのが功を奏したかね?