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必殺技はおにぎり

作者: 石野柘榴

「お母さんのおにぎりってどうしてこんなにおいしいの?」

娘は小さい頃、私にそんなことを言った。

そんなかわいらしいことを言ってくれた娘は今や反抗期。

口はきくが言葉は乱暴。

私も通ってきた道ではあるけれど、どこか腹が立つ。

高校生になり、おしゃれに目覚め世間体を気にするようになった娘は、おしゃれなお弁当に憧れているらしい。

「らしい」というのは娘の部屋を掃除した時にカフェごはんの本が何冊か増えていたからである。

でも私はそれを本人から聞いていないので無視をして普通のお弁当を作る。

いろどりは多少気にして作りはするが、動画サイトのおしゃれ高校生たちのお弁当とは程遠い。


彼女は2年生になったが外出自粛により、休校。

オンライン授業ばかりになり、私もお弁当を作ることが無くなった。

しかし、学校が再開された日、彼女は張り切って自分でお弁当を作ろうとしたのか、朝早くから台所から音がする。

こっそり覗いてみると不器用に頑張っている娘の姿。

手を出されることを嫌がる年頃、放置しよう。

そんな風に思ってリビングでテレビを見ていたら背後に気配を感じた。


「ねえ」


ん?私に話しかけているのか?


「あのさ」

「なに?」


娘の顔を見ると目をそらして斜め下を見ている。

私は思わず目線の先を見た。何もない。


「おにぎり…」

「え?」

「おにぎり」

「いや、おにぎりはわかるんだけど、おにぎりがどうしたの?」


娘は口を尖らせながら私の顔を見た。


「おにぎり作って」

「え?おにぎり?」

「うん」

「おにぎりでいいの?」

「うん。おにぎりがいい」

そう言って娘は部屋に入って行った。

彼女はすっぴんにパジャマ。時計を見ると今から身支度しないと間に合わないのであろう。不器用ながら頑張ったが炭水化物は間に合わなかったようだ。

私は台所で彼女のお弁当箱の中身を見た。

本に載っているような色鮮やかなかわいい中身。頑張ったんだね。


さて。おにぎり作るか。

数分後、おにぎりが出来上がり、冷ましきった頃に娘は部屋から飛び出してきた。


「ねえ!おにぎり!パス!」


私は思わず娘にかわいいアルミホイルで包んだおにぎりを投げた。

勢いよく飛んだおにぎりはさながら必殺技を発動したような速度であった。


食べ物を投げてしまった。反省。

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