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10階の猛是  作者: 凪沙一人
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方舟

 オデットが疑問に思うのも当然だった。

「大丈夫よ。“契約の箱(アーク)”の入った“方舟アーク”ごと取り戻すんだから。汝、奪うなかれとはあるけど取り戻すなかれとは示されてないし。」

 方舟。その存在をオデットとライラも噂程度には知っていたが、司祭や一般の神問官インクイジタークラスに詳細は知らされていなかった。しかし、ヴィエールは違う。

「容易では無いぞ? 」

 ヴィエールに言われてもマリーナは澄ました顔で頷いた。

「わかってるって。今、方舟を動かせるのは教皇と先代の孫の私くらいなものだもん、嫌でも直接対決になるわよね。でも向こうには枢機卿も居ないんだし手強そうな相手は教皇だけでしょ。何とかなるなる。」

 マリーナの態度にヴィエールは呆れるを通り越して感心していた。

「よくも、この状況で前向きになれるものだな。」

「猛是の相手をしなきゃならない七柱に比べたら楽勝でしょ? 」

 にこやかにマリーナが言うとヴィエールも、それはそうだと言わんばかりに頷いた。オデットとライラからすれば七柱の方が手強そうに思えたのだが。

「猛是さんて、そんなに凄いんですか? 」

 ライラは、アズライールとラミエルが教会を襲撃してきた時に猛是と顔を合わせてはいたが、闘う姿を見た訳ではないので凄さは感じていなかった。

「そりゃ、もちろん。今の教皇より数段… いえ、数十段は上の実力者よ。」

 するとオデットが首を傾げた。

「そんな実力者が何故、一介の神問官なのですか? 枢機卿や司祭でも、おかしくなさそうに思えますが。」

 マリーナは小さく頷くと少し苦笑した。

「まぁオデットが疑問に思うのも無理はないわよね。理由は2つ。当時、枢機卿だった現教皇の猛反対と、もう1つは本人が拒否したって事。話しはここまでにしましょ。大物のお出迎えよ。」

 方舟へと向かう途中の広間では教皇が1人で待ち構えていた。

「やはり方舟を狙うか、裏切り者どもよ。」

 教皇を前にしたとて今さら臆するようなマリーナでもない。

「教会からすれば裏切り者かもしれないけど教義を裏切ったのは、そちらよね? だとしたら真の裏切り者は教皇あなたの方。どうやら世界同時配信の効果はあったみたいね。倭の名探偵の思惑通り、戦わずして戦力は削れたみたいだし。何より、その手にしているのが“古代の遺物(エンシェントレリック)”というのが証拠。発動しないんでしょ、“隕石の金属器具メテオ・メタル・マテリアル”が。」

 マリーナの言うとおり教皇の手には“見張る者(エグリゴリ)”指導者の得物である筈の“古代の遺物”が握られていた。

「どうせ世間の者に“隕石の金属器具”と“古代の遺物”の区別など、つきはしない。ここで、お前たちを葬り教義を書き換え、“見張る者”との歴史的な和解をした教皇として名を残し、世界を統一する。さすれば争いの無い世界が実現されるのだ。何の問題があろうか? 」

 それを聞いてマリーナは嘲笑した。

「ハハハハハッ。笑わせないでよね。貴方に私たちは倒せない。七柱でも猛是は倒せない。貴方がしようとしているのは人の尊厳を奪う行為よ。世界統一じゃなくて世界征服。そんな事を神問官として許せる訳、ないじゃないの。」

 その様子を見ていたオデットは両手を広げてヴィエールとライラを下がらせた。

「相手は教皇だ。ここは力を合わせて対処すべきではないのか? 」

 ヴィエールは協力すべきだと主張したが、オデットは首を横に振った。

「こういう時のうちの先生は手がつけられないんです。迂闊に近づくと怪我をしますよ。」

 見ればマリーナの足元には、まるで水玉模様のように水滴が目に見える大きさで散っていた。その1つ1つから糸のようなものが立ち上ると教皇目掛けて襲い掛かった。教皇も“古代の遺物”を身構えたが糸のようなものの束は直撃寸前に投網のように広がり教皇を包み込んで繭のようなものに閉じ込めてしまった。

「まさか教皇、私の“隕石の金属器具”の能力を忘れてた? 皆、今のうちに先を急ぐわよっ! 」

「でも、マリーナさん… 」

 ライラが驚いたように繭のようなものに閉じ込められた教皇に視線をやった。

「引き渡そうにも、ここは警察も入ってこれない場所だからね。それに私の器具は相手を傷つけずに捕縛する為のものだから、仮にも嘘でも紛い物でも教皇なんだから、いずれ出てくるでしょ。“方舟”の中で暴れられても困るから放置プレイするしかないのよ。」

 自分の先生でありながら、マリーナの言動にはオデットも頭が痛い。しかし警察に引き渡せないのであればマリーナの言っている事が教義、戒律に沿った合理的判断とも言える。4人はそのまま、一気に方舟へと向かった。突然に目の前に広がる巨大な空間に一同は思わず足を止めた。

「教会の地下に、このような空間が在るとは… 。」

 風の枢機卿を務めてきたヴィエールも初めて見る光景であった。その空間に一艘の光輝く黄金の船が浮かんでいた。

「先生… あれが“方舟”なのですね… 」

 感嘆したオデットの声にマリーナも頷いた。

「そう。あれが先代教皇おじいちゃん水晶髑髏クリスタルスカルから読み解いた図面を元に隕石の金属で復元した“契約の箱”の移送船“方舟”よ。」

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