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10階の猛是  作者: 凪沙一人
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指導者の上に立つ者

「戻れラミエル。」

 どこからともない声にラミエルの放った電撃が消えた。紫苑からすれば何が起きたか分からない。

神問官インクイジター… でしたね。厄介な組織を作ってくれたものです。どうしても彼等“見張る者(エグリゴリ)”に“契約の箱(アーク)”を渡す気は無さそうですね? 」

 いつの間にかラミエルの居た場所には金色の鳥人間が居た。いや、よく見れば鳥の頭の形のマスクのようだ。その存在は神々しい程に威圧感を感じる。紫苑も何かを言おうとしたが声が出ない。

「あぁ、この辺の空間は私が制圧しました。この空間で勝手に話す事は出来ません。… いや昔、隕石の回収をしに倭に行った際、白衣の銀狼が平然と喧嘩を吹っ掛けて来た時は驚かされましたけどね。今は彼が居ないとはいえ、教会の本部となれば、ここで君を葬っても次々と出てくるのでしょう? 司祭あたりまでは構いませんが枢機卿や教皇まで出てこられては此方も部が悪い。ここは1つ、互いに見逃しませんか? 君を殺さない代わりに我々の撤収を邪魔しない。悪い条件ではないと思いますよ? 」

 紫苑も色々と言いたい事はあるが声が出ない。出来る事は首を縦に振るか横に振るか。つまりイエスかノーの二択である。首を振らずに時間を稼いだとしても、あまり意味は無いだろう。対峙しているだけで圧倒的な力の差を思い知らされている。もはや紫苑は首を縦に振るしかなかった。

「うん。賢明な判断です。それでは失礼。」

 謎の人物の姿は消え、紫苑も威圧感から解放された。

「な、なんだったんだ… 。」

 そう呟くと紫苑は気を失って、その場に倒れ込んでしまった。

「久々に、このマスクを被りましたよ。ラミエルも無事でなによりです。」

 マスクの嘴を擦りながら謎の人物が言った。

「お手を煩わせて申し訳ありません。」

 “見張る者”の中でも指導者の立場にあるラミエルが平身低頭だ。

「神問官が“名もなき者”どころか指導者と対等の力を持ち始めた… 隕石回収の失敗が、ここに来て大きく響いてくるとはね。ともかく、鍵が現れた以上、鍵と“契約の箱”の回収は最優先事項であり急務です。鍵と“契約の箱”が2組在ると分かった時点で人数的優位に任せて同時に回収する予定でしたが事は簡単ではなさそうです。この世界には二兎を追う者は一兎をも得ず、というそうではないですか。ならば一兎を先に全力をもって回収しようという事です。」

「それでは、もう1組の在処ありかが分かったのですか? 」

 ラミエルの疑問も無理はない。アズライールが入手したダイヤモンド・スカルの記録内容は情報共有している。そして手掛かりを求めて宝泰峰ほうたいほうの赤戸村へと向かったアザゼルも猟魔、ピッキー、ソフィアの三人に阻まれて目的を達していない事は知っていた。

「鍵はまだ銀狼の所に居る娘しか情報が無いけど2つ目の“契約の箱”はシェミハザと荒木場アラキバが見つけてくれました。」

 それを聞いてラミエルも察した。他の者ならいざ知らず荒木場が噛んでいるとなれば2つ目の“契約の箱”は倭に在るという事になる。

「それで、何処に? 」

唐京とうきょう倭皇城わこうじょうの地下、奥深くにあるようです。ただの象徴的なモニュメントだと思っていましたが、確かに周囲を取り囲むように各行政局が並び立っている分、警備が厳重であっても不自然にはならないでしょう。そして、その東西南北に神問官が配置されています。それも並みの司祭などより、よほど手強い神問官がね。」

 “見張る者”の内部でも猛是、猟魔、彩華、玄武の4人は神問官の中でも別格と据えているようだ。

「となると大聖堂と同様もしくは、それ以上の準備が必要になるのでは、ありませぬか? 」

「だからこそ、七柱の1人である、この太陰のシンが参ったのです。」

 指導者の能力ちからをシンは凌駕する。だが、ラミエルには確認したい事があった。

「この件を、あの方は御存知なのですか? 」

 するとシンはラミエルの言葉に苦笑した。

「父上か? 心配は要りません。父上ならわかってくださる。我々にとって、何が重要なのか。そして何が邪魔なのか。鍵が現れるのは歴史の中の、ほんの一瞬に過ぎません。今を逃せば、また何十年、何百年… いや、何千年も先になるかもしれないのですよ? ならば、今こそ行動すべき時だとは思いませんか? 」

 シンの言葉は問い掛けているようでいて反論を許さない威圧感があった。するとラミエルはシンに一礼をして部屋を後にしようとして呼び止められた。

「何処へ行くつもりですか? 」

「もちろん、あの方の元です。あの方が御認めになられていなければ、あの方の御子息とはいえ従う事は出来ません。」

「不要です… 、と言ったら? 」

 ラミエルの回答に対してシンの苛立ちが感じられた。

「そうはいきません。我が選霊名は“神の雷霆”、決して神の子の雷霆ではありませ!? な… 」

 ラミエルも実力格差は分かっていた。しかし、シンがいきなり自分の命を奪うとひ予想出来なかった。

「私は必ず父上より先に2つの“契約の箱”と“鍵”を手に入れ、七柱の主柱となってみせる。その邪魔は“見張る者”の指導者といえど見過ごせません。」

 その時、部屋の扉がゆっくりと開かれた。

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