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パープリン大将と、僕。  作者: 運田 兵鉄
8/8

パープリン大将と、僕。 最終回です。

パープリン大将が生きていた。しかも似ても似つかないNK国の指導者の影武者となっていた。定食屋の油煙に煙るテレビに映ているのは、紛れもなくパープリン大将だ。半年前新潟でパープリン大将は拉致されたのか。三吉兄いと僕は、高鳴る心を落ち着かせながら、パズルのピースをひとつひとつ埋めるように、失踪ストーリーを予測していた。しかし誘拐される理由など無い。分けが分からない何でよりによってパープリン大将なんだ。拉致被害者家族と同じ思いをし、二人の疑問は果てしなく結果の出ない無限ループのように続いた。この事態を警察に報告するのは、いいとしても、助け出すことなど出来るのか。とんかつに手が付けられないままに、閉店時間となり定食屋の婆に追い出された。ただ一つパープリン大将なら大丈夫だ。必ず帰って来る。、何の根拠もなくこの一点だけは三吉兄いと僕の間で一致した。三吉兄いと僕で出来る事。そうだ。お清め塩を送ることだ。なめくじの一件以来お清め塩は、離すに離せないお守りで、ある意味武器になっていた。強力な塩がいい、護国神社の塩がいい。時間はかかったが、やっとK国からプロパガンダでNK国に飛ばされている風船に紛れ込ませてもらう事に成功した。気休めに過ぎないが万が一でも塩が届けば大きな力になるはずだ。時間はたち二カ月が過ぎていた。最近ではパープリン大将はNK国の指導者ジョンコルトレンウンとしてテレビニュースに映ることも多くなり、A国のトランポリン大統領と首脳会談をするそうだ。三吉兄いと僕は、ただ八百万の神に祈るのみとなっていた。


あの新潟の夜、パープリン大将がホテルの部屋に入ると、部屋に潜んでいた男たちに抑え込まれ、注射を打たれ気を失った、、次にうるさい音に気を取り戻すと、そこは後で分かったことだが潜水艦チンドンヤ号の中だった。事の次第も分からぬまま、また注射で眠らされ、目が覚めるとNK国の指導者ジョンコルトレンウンの公邸の一室だつた。日本語の堪能な世話係の女性から、パープリン大将は強権的ではない説明を受けた、女性の話では、指導者ジョンコルトレンウンを含む影武者が暗殺テロで何人も殺されてしまい、頭数が足りなくて困っている。そこで絶対的に運のいいあなたに目を付けた。あなたなら殺されない、ついてはこの国のために協力して欲しい。恐らく日本人であろう女性はパープリン大将に謙虚に説明しお願いした。パープリン大将は借金以外のお願い事は断ったことは無い、パープリン大将は「引き受けるヨン、パープリン」と反射的に答えていた。その日から影武者修業が始まった。指導者の仕草、性格、一挙手一頭側、歩行、NK語の研修、政権幹部よりのレクチャー、政権の方針、民族差別の正当性。指導者の血統、多岐にわたる教育を否定すること無くパープリン大将はすべて受け入れた、パープリン大将の何事にも真摯な姿勢に、次第に政権を支えるスタッフ達からの信任も集った。

ある日パープリン大将の名の入った袋を持った政府高官が、やって来て、黙って袋を手渡し、去っていった。それは例の護国神社のお清め塩の入った袋だった。

数日後、国家最高幹部会議が行われパープリン大将も勉強のためオブザーバーとして参加することになった。会議は進み核ミサイル大国を目指す方針が採択される時、突然パープリン大将が指導者ジョンコルトレンウンの仕草で、日本語で話し始めた。「みなさんに一つ質問したい、ある国には、海行かばという歌があります。海行かば、水漬く屍、山行かば、草生す屍、大君の辺にこそ死なめ、かえへり見はせじ、

このような心情の民はいますか」何を言っている数人の男が立ち上がりいきり立った。パープリン大将はお清めの塩をまいた。男たちは溶け始めた、やはり、なめくじの化け物だった。

パープリン大将は、「我が国のめざすべき道は、ギャンブル大国です」はっきりした冷静なその言葉に拍手が起こり、しだいに大きくなり鳴り止まなくなった。ギャンブル大国の決断をしたNK国は着実に繁栄への道を歩み始めた。トランポリン大統領との会談も、「パープリン」の一言を「ゴルフのパープレイ」と間違えられたおかげで、うまくいった。ついでに内政強化の名目で、日系人の追放も決めた。拉致被害者と北の極楽園をめざした人々は国外追放となり、これを受けてN国より、豪華クルーズ船二隻がやって来た。

クルーズ船は新潟港へ向かった。

三吉兄いと僕は、マスコミ、関係者でごったがえす岸壁にいた。クルーズ船が着岸すると、歓迎の吹奏楽が始まり、声にならない声を発して、拉致被害者の人々がタラップを降りてきた。その列はいつ果てるのかと思うほど続いた。タラップを降りる人も疎らに成った頃、丸坊主の太った大男が下りてきた。三吉兄いが駆け寄った遅れて僕も駆け寄った。三吉兄いが言った「今日から弥彦の競輪が始まります。」大将は「パープリン」といって、ニッコリした。パープリン大将と三吉兄いと僕の全国旅打ちが、また始まった。

                おわり。


大将が

パープリンと言ったから

今日はパープリン記念日

           三吉。

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