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パープリン大将と、僕。  作者: 運田 兵鉄
7/8

パープリン大将と、僕。 新潟で、消える。

この時点で、パープリン大将は、正確には大将ではない、ただのパープリンである。蕎麦屋の店主(大将)のたっての頼みでパープリンは、三吉を引き受けた。三吉兄いにとって、主人は大将である、ややっこしいが三吉兄いが大将と呼び始めてから、パープリン大将に成ったのである。

三吉兄いと僕の役処は大将に、いかに気持ちよく損してもらい、パープリン大将に喜んでもらうかを算段するのが、仕事の様なものである。競馬に行けば、不人気の馬を進め、競馬場帰りに、わざわざ証券会社に立ち寄り、経営不振の会社の株を買い、損を仕向けるのだが、ことごとく大儲けにつながり大将をがっかりさせてしまう、役立たずの子分なのであるが、パープリン大将は子分を責めることはしない、そんなに金を失いたいなら、寄付とかボランテイア慈善活動とか納税とかすればいいと思うのだが、感謝されるのを良しとしない、スリル、気分の高揚が無いとつまらないのだ。ある時、新聞に出ていた詐欺まがいの悪徳会社に電話したことがあった。和牛の投資話だったが、パープリン大将も乗る気で信じ込みいいところまで行くのだが、セールスが最後に「絶対儲かりますよ」の禁句を発して契約はぽしゃってしまうのである。詐欺師には、損する話をお願いするのだが、通常と反対のセールストークに戸惑いことごとく失敗してしまうのである。三吉兄いと僕がパープリン大将に褒められたのは、馬主の投資だ。二流の血統馬とかオークションの売れ残り馬とかをパープリン大将に進めるのだが、これは断トツの確率で損をする。ただ欠点もある生き物なので情が移ってしまい、パープリン大将より、三吉兄いと僕の方がメンタルをやられてしまう。なかなかうまくいかない。パープリン大将の性格は、おっとりしているが、負けず嫌いであり、負けると勝つまでやるタイプである。ゆえに、金があるため、なかなか負けない。

酒、女に入れあげることも無い、面倒なことが嫌い、第一に会話が苦手だ。グルメで大食漢ではあるが、いくらパープリン大将が大食いでも胃袋は一つである。大した浪費にはならない。住居、ファションにしても、パープリン大将は興味を示さない、坊主頭にTシャツ、ジーンズ。3LDKのありふれたマンションの二階に一人でくらし、富豪の匂いは何処にもない。金を減らすために、ただギャンブルに勤しむ。競馬だけではない、競輪、ボート、オートレース、何でもござれだが、パチンコ、スロットはしない、レートが低いのだけが理由ではない椅子が小さいからだ、パープリン大将は大きいのではみ出て尻が痛くなるのだ。

金を無くす事に、三吉兄いと僕は頭を悩ませる中、兄いが名案を思いついた、全国ギャンブル場巡りである。北の北海道門別競馬、帯広ばんえい競馬、札幌競馬場、函館競馬場、函館競輪、青森競輪、北から攻めて、全国旅打ちの旅。贅沢だ。絶対負ける。ギヤンブラーの憧れの旅。その話にパープリン大将は、「一丁行くか、パープリン」と答えた。

パープリン大将とその一行はロールスロイスで、門別競馬場に向かった、競馬を楽しんで温泉、地元の御馳走を食べて、ギヤンブル、温泉、ギャンブル、御馳走、勝ち負けを繰り返して、確実にお金は減っていった。東北に入り、青森競輪、岩手競馬、平競輪、福島競馬場、開催の無い時は取り合えず現地で投票券を買った、楽しいの何のてない、最高の気分で、新潟競馬場に向かった、夕方になりやっと新潟のホテルに着いた。明日の競馬の話をしながら各自、自分の部屋に消えた。翌朝フロントで待ち合わせたのだが、パープリン大将が来ない、部屋にはそのまま荷物はあり、現金もあり、大将だけがいない。警察に行くが、心当たりも何もない、ホテルの防犯カメラを調べてもらうが、映像はない、捜索願を出すこととなってしまった。突然の幕切れに三吉兄いと僕は戸惑った。東京に戻ってからも、

競馬場を探したり、競輪競艇場をあてもなく探し続けた。手掛かりは何もなかった。半年が過ぎ三吉兄いも僕も、全て夢だったのかと、今までの事を疑いだしていた。

それは、三吉兄いの驕りで、いつもの定食屋で、げんかつぎのとんかつ定食を食べている時だった。油だらけの古いテレビに、パープリン大将らしき人物が写っている、頭はツーブロック、テレホンヘッドになり、黒い詰襟の服を着て、黒淵のメガネ、画面下のテロップに、白お父さんと言う神山で、肉体改造し鍛え上げた指導者は二回り大きくなった。北の極楽園、NK国の指導者となっていた。まさか、三吉兄いと僕は顔を見合わせた。


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