乙姫、興奮
潜水艦乙姫、半身浮上。
すでに主砲はロケット型の駆逐艦をねらっている。
駆逐艦も軽巡洋艦も、ロケット型をしていたが甲板は存在していて、そこに主砲や魚雷発射管が並べられていた。
舷側にも主砲や魚雷発射管は据えられていたけれど、こちらはメインではないと乙姫は言う。
「舷側兵器の魚雷やエネルギーを積むだけのスペースがもったいないですからね。やはり甲板上の兵器がメインになります」
そして輸送船は箱型をしていて、駆逐艦や軽巡洋艦に比べるとはるかに大きい。
「本来なら輸送船は乙姫の主砲では破壊しきれません。魚雷頼みになるところですが、麻実也艦長のおかげでパワーアップしていますから」
それでも魚雷を発射したのは、「確実にしとめるため」だそうだ。
その魚雷が輸送船団に命中した。
乙姫の艦首右側から発射したものである。
そして艦首魚雷左側からも魚雷を発射していた。
「すでに警戒されてますので、この魚雷は外されるかもしれません」
ですから。
魚雷音を探知する駆逐艦を沈めなければならない。
それ故に駆逐艦へ狙いをつけた状態で半身浮上したのだ。
砲雷長が細かな照準修正をおこない、輸送船団を護衛する二隻の駆逐艦のうち、一隻をしとめた。
後甲板に命中した乙姫の光弾は駆逐艦の機関部へ到達したのだろう。
盛大な爆発を起こして一撃で葬り去った。
「砲手、次ねらえ、次!」
天敵はもう一隻。
輸送船団を守っている。
これにも乙姫の主砲は牙を剥いた。
今度は竜骨でも叩き折ったか、駆逐艦は真っ二つに引き裂かれて爆発した。
そして乙姫の魚雷第二波は三本中二本が命中。
残る輸送船を五隻にした。
輸送船団の数を半減させたものの、護衛の軽巡洋艦は健在。
そして駆逐艦もデコイに向かったものが二隻、軽巡洋艦に従ったもの四隻が残っている。
「ご安心を、麻実也艦長。乙姫の主砲は軽巡レベルですが、麻実也艦長の生み出すエネルギーのおかげで重巡クラスの破壊力がありますので」
そして砲雷長が言うには、連射速度が毎秒一発のまま射程距離が重巡洋艦レベルにまで伸びているそうだ。
「それってものすごいことじゃない?」
「ものすごいなんてもんじゃありません!」
乙姫はフンスと鼻をならす。
だから乙姫、顔が近いから。
「隠蔽に長けて亜空間から自在なポジションを奪えて、火力があって魚雷も撃てるなんて、海軍関係者が聞いたらヨダレが垂れるような潜水艦です!」
「副長、艦長の顔ばっかり見てないで、潜望鏡覗いてな」
「おぉ、いけませんいけません。まだ戦闘中でした」
乙姫は脚を肩幅に開いて、お尻をクイッと突き出すように潜望鏡を覗き込んだ。
僕の視線は、自然と乙姫の背中に向いた。
女の子はお尻こそ丸みを帯びているけれど、背中は狭くて肩幅も頼りない。
乙姫の後ろ姿はお尻も背中も肩幅も、とても女の子らしいもので、心の中に尊さを感じてしまった。
「船務長、乙姫は半身航行をしているけれど、敵のレーダーに引っかかったりしないの?」
「電波探知機はある程度の大きさがないと感知しません。乙姫の艦橋と主砲だけでは探知できないかもしれませんね。もし探知できたとしても、妙な形に見えているとか、主砲の威力があり過ぎだとかで混乱しているかもしれません」
そんなこんなで、主砲をもう一発。
デコイを追いかけていた駆逐艦が炎に巻かれた。
「みんな慌てるな、威力も射程もこっちが有利だ。潜水艦には水雷戦隊が有効なんて常識は、乙姫にゃ通じないってところを見せてやれ」
砲雷長は攻撃班全体に伝達した。
そしてその通り、乙姫の主砲は一隻、また一隻と敵を沈めてゆく。
軽巡洋艦は駆逐艦よりも頑丈にできているそうなのだが、乙姫の主砲はこれも一撃で撃沈した