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訓練から実戦へ

飛行機、飛行機、飛行機、たまに駆逐艦。


さらに飛行機、飛行機、飛行機、ときどき輸送艦。


そして飛行機、飛行機、飛行機、そろそろ空母。




とにかく夢に出てきそうなくらい対空戦闘訓練がほどこされた。


それもほとんど休みなく。






「よし、飯休憩」




ジョー司令官の号令で食事をとっていても油断はできない。




「艦長、電探に感あり! 航空機六十接近中!」




「飯くらいゆっくり食わせろよ! 総員対空戦闘ヨーイ!」




電探士だって嗜好品代わりのドリンク片手に仕事をしているんだ。


僕も主計長手ずからの握り飯を片手に指揮をとる。




「潜水艦乙姫は右舷に艦首を向ける。潜水艦桜姫は左舷に艦首を向けよ!」




桜姫に連絡をすると、「モガモガ」という返事。


どうやらライゾウも昼飯の最中だったようだ。


潜望鏡を覗く乙姫の突き出されたお尻やスラリとした脚を眺めていれば、僕の欲望……つまり潜水艦乙姫の砲弾は尽きることが無い。




砲雷長などは「どれだけため込んでるんだよ、艦長?」と笑っていたが、今はそれどころじゃない。撃って撃って、落として落として。


ほとんど脊髄反射だけでも操艦、射撃ができそうなくらいだった。




こんな波状攻撃が当然なくらい、敵も必死なんだろうな。


これが戦争ってものなんだろうな。


僕も社会人なのだから、そのくらい『他人の視点に立つ』べきなんだろうけど、今はただウンザリなだけだった。




「この腐れ帝国軍が! どれだけ飛行機持ってんだよ!」




と怒りたくなるくらいである。


怒らないけどね、乙姫たちがいるから。


だけど少しコツは掴めた気がする。




こちらが電探で飛行機を感知するのが、距離にして約一○○宇宙キロ先。


時間にして約二十分の余裕がある。


それは僕たちの優位性アドバンテージだった。




主砲を向けて半身潜行。


しかも敵の飛行機には電探が装備されてない様子。


故に先頭で飛んでくるのは、必ずと言っていいほど対潜哨戒機。




これをまず落とすも良し。電波音波の範囲から逃げてから落とすも良し。


僕たち第二十一潜水艦隊は、基本的にこれを落とすことを先にしていた。


基本的に、ということは逃げることもあった。


常に落としていたら、僕たちが第二十一潜水艦隊という個であると悟られるからである。




まあ、そんなこんなで一週間。僕とライゾウはみっちりと飛行機の洗礼を受けてしまった。






「よろこべ、二人とも。訓練成績優秀をもって、訓練カリキュラムの終了を宣言する」




ある日僕たちはジョー司令官から直接言い渡された。


乙姫も桜姫もライゾウも、素直に喜んでいたようだけど、僕は喜べなかった。


訓練カリキュラムの終了ということは、いよいよ実戦配備だと思ったからだ。




事実、ジョー司令官はかくのたまった。


「そこで第二十一潜水艦隊には、早速であるが急務をこなしてもらいたい」


そら来た。




「諸君らはこれより急ぎ敵本陣である帝国軍本星惑星スカル近海を航行する、あらゆる補給艦輸送艦を発見し、可能な限りこれを沈めてもらいたい。ムシル泊地も本星より潜水艦隊補給母艦を借り受け、君たちに十分な支援をしたい」




言ってることは「頑張ってこい、支援をするぞ」ということだけど、裏を返せば補給母艦まで出すんだからしばらく帰ってくるな、ということだ。


アルファ軍が第二十一潜水艦隊にすがっているのがよくわかる。


というか、それだけ物量に差があるということなのかもしれない。






まあ、バンバン飛行機飛ばしてくる空母を討てとか、駆逐艦百隻に突っ込めとかいう命令よりははるかにマシだろう。






そんな風に思っていた時期が、僕にもありました。


いざ敵の本陣近海へ来てみれば、バカみたいな数の輸送艦補給艦が三十杯の護衛駆逐艦に守られて、飛行機の護衛も五十六十当たり前。


おまけに下手なちょっかいかけたら、本星の飛行場からダース単位で飛行機が飛んでくるときたもんだ。




そしてそれ以前に。


帝国軍本拠地惑星スカル海域へ入る前に、帝国軍自慢とも言えるレーダー衛星の目をかいくぐらなければならなかった。


レーダー衛星。


その名の通り、惑星スカルを守るレーダーである。




僕たちは四つも五つもあるレーダーのひとつに亜空間潜行で近づき、至近距離から砲弾を浴びせまくってこれを破壊。


すると来るわ来るわ、本星航空基地の飛行機がうじゃうじゃ。




それを潜行してやり過ごすと、今度はお互いに衝突しそうな数の軽巡、駆逐艦の群れときたもんだ。


帝国海軍というのは、よほど暇なのだろうか?


それともこんな物量に対抗する、惑星アルファ軍が間違っているのか?


とりあえず水雷戦隊の群れもやり過ごし、どうにか本星海域へ到着。






「さて、どうしましょうか?」


副長乙姫が困り顔。




「このまま輸送船団を待ち受けても、本星から飛行機がひと山いくらで飛んできますけど」




なんとかならないか? と乙姫は言う。


なんとかなるものなら、僕もそうしたいところなんだけど。




「桜姫に考えがあります♪」


潜水艦桜姫から盗み聞きしていたかのように無線が入った。


「輸送船団を迎え撃つ前に、最寄りの航空基地を破壊するというのはいかがでしょう?」






つまり、輸送船団をレーダーで百キロ先にとらえたら、まず飛行場を攻撃。


レーダー、通信施設も破壊した上で輸送船団の元へ戻ってきて、これを討ち取る。


という作戦らしい。




「そうなると、潜水艦の6インチ砲では大気圏にはいらないと砲弾が届きませんよ?」


「大気圏で砲撃するから輸送船団にはみつからない。そうは思いませんかぁ?」




無茶もいいとこ、二重作戦である。


古今東西、この手の作戦は失敗するものである。


「では何故失敗したのでしょう? 失敗の要素を取り除いて、作戦立案してはいかがですか?」




失敗の要素というのは簡単だ。


二重作戦というのは行動が複雑になる。


歯車がひとつ狂っただけで、事態は思いがけない方向に進むものだ。




「でしたらより簡潔に、いまから最寄りの飛行場を叩きにいきましょう♪」




そんなことをしたら、輸送船団がコースを変えたりしないだろうか?


「コースを変える船は用心深い船です。これは縁が無かったと考えましょう。狙うのは、すぐにでも物資を運搬したい、急ぎの船です」




なるほど、最初から取捨選択ができているのか。


それは便利な考え方だ。


急ぎの積荷ほど僕たちの網に引っかかるということだ。




「やってみようか、乙姫。どの道このままじゃ生還は難しそうだ」


「そうですね、艦長。やるだけの価値はありそうです!」


顔の前で握り拳を作り、乙姫もやる気を見せてくれた。



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