88・考えさせて
短いですわ。
「…はっ?」
「だから男なの。エリスは」
呆けるシャロンに、レイナはもう一度言う。
「男の娘なのか!? エリスは!」
「その『オトコノコ』って団長も言っていたけど、シャロンも同じことを言うんだ」
地球の日本の言葉である『男の娘』を、レイナは知らない様だ。
「元々エリスは生まれつき女の子ぽかったけど、竜騎士になる前に勤めていた屋敷で、其処に居たメイドの人達に可愛がられている内に、本当に女の子の様になってしまったの」
「……」
レイナが説明する中、エリスは顔を赤くして俯いていた。
「それでもエリスの性別は男だから、女であるシャロンなら大丈夫でしょ?」
「いやそれ、俺の意見聞いてないじゃんか」
シャロンがツッコミを入れる。
「第一俺、恋人居るし」
「えっ!?」
それに驚いた反応を示したのは、エリスだった。
「だ、誰ですかそれはシャロン様」
慌てて尋ねるエリス。
「それは…」
答えられなかった。その恋人は相棒のドラゴンのヨハンなのだから。以前ポールから聞いていたが、人間とドラゴンが恋をするというのは、あり得ないらしかったからだ。
「誰かは教えられないが、兎に角俺には好きな奴が居るんだ」
「…それは分かりました…けど、私がシャロン様に対する思いは本物なんです」
エリスが必死な表情で言う。それに対してシャロンは困った表情をする。
「参ったな…まさか男の娘に好かれるなんて、前世の俺からは想像も付かないな…でも俺にはヨハンが居るし…でもエリスは諦めそうにないな…」
少し考えた後、シャロンは口を開いた。
「…少し考えさせてくれないか? 俺も恋人に相談する時間が欲しい」
「…そうね。シャロンに恋人が居るなら、相談する権利くらいあるわよね…エリスもそれで良いわよね?」
「分かりました…ご迷惑かけてすみません、シャロン様」
お辞儀をしながら言うエリスに、つい溜息を漏らしてしまうシャロンであった。
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