78・夜間戦闘訓練とデート 1
今回は戦闘訓練の描写です。地の文が多いです。
シャロンがヒナタの手伝いを終えた時、既に日が暮れていた。
「ヤバいな、ヨハン待ってるかな」
シャロンはヨハンとの約束の場所へと向かった。
建物を出て外を見回すと、昼間ヨハンと別れた場所にヨハンが居た。
「ヨハン!」
「シャロン!」
シャロンが声を掛けると、ヨハンが尻尾を振りながら答えた。
「ゴメンヨハン。ヒナタの書類の手伝いをしてて、遅くなった」
「いいよ別に、僕も今来たところだったし」
そう言うヨハンであったが、ヨハンの事だから大分前から待っていたんじゃないかと、シャロンは思った。
「それよりシャロン、そろそろ訓練に行こう」
翼を広げながら、ヨハンが言った。
「そうだな。じゃあ頼むな」
そう言うとシャロンはヨハンの背中に乗った。シャロンが乗ったのを確認すると、ヨハンは翼を羽ばたかせて、夜空へと舞い上がった。
※ ※
草原に金属の当たる音が響き渡る。星空が広がる夜の草原で、大きな影と小さな影が打ち合っていた。
「はぁ!」
シャロンの振るう白風を、ヨハンが持つ蒼銀が受け止める。ヨハンが突き出す蒼銀を、シャロンは紙一重で躱した。
シャロンとヨハンが行う訓練とは、接近戦における訓練だった。それもシャロンからしたら自分の倍以上の大きさを持つヨハンとの訓練であった。
何故シャロンがこの様な訓練を行っているかというと、先日のヒナタとの戦闘が原因であった。
先日ヒナタに勝利したとはいえ、それはギリギリの勝利であった。それはヒナタが幾多の戦闘を潜り抜けた猛者であると同時に、自分はまだ覚悟を決めたばかりの存在である事が最大の理由であるとシャロンは思った。
その為シャロンはヨハンと共に、夜な夜なエルセラを抜け出して、夜の草原で訓練を行っているのだった。
「そらぁ!」
「ッッ!!!」
シャロンの首元に、ヨハンの蒼銀が突き付けられる。
「…僕の勝ちだね」
「…そうだな」
シャロンはゆっくりと白風を降ろした。
「…はぁ~今日も勝てなかった…やっぱヨハン強すぎ」
緊張を解いた声でシャロンが言った。
「そりゃ300年以上生きているからね。シャロンと契約してから得た武器でも、簡単に使いこなせるよ」
ヨハンが蒼銀を鞘にしまいながら言った。
「さてとシャロン…今日の訓練も終わったから…」
「ああ…」
シャロンも鞘に白風をしまいながら、ヨハンに近づくと、ヨハンは大きな手でシャロンの頬を撫でた。
「デートの時間だな」
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