72・副団長
その後はシャロンを休ませる為、お開きとなった。シャロン自身はもう体は大丈夫だと言ったが、医務室を担当している救護団員から、念の為にもう一日此処で休む様に言われて、仕方なくポール達に、ヨハンへの伝言として、『俺は大丈夫だから、心配するな』と伝えておく様に頼んだ。
次の日
「うーん…」
体を伸ばしながら、シャロンは目を覚ました。そしてベッドから立ちあがると、足のバランスを崩した。
「あれれ…四日もベッドの上に居たから、足がなまってしまったよ」
そんな独り言を呟きながら、何とかバランスを取り戻すと、医務室の扉をノックする大Tが飛び込んだ。因みに今は救護団員は居ないので、用があるのはシャロンの様だ。
「はーい」
「ヒナタや。ちょっとええか?」
来訪者はヒナタだった。シャロンは入室の許可を出すと、手に騎士団員の服を抱えたヒナタが入ってきた。
「この前のバトルで、シャロンの制服ボロボロになったやろ。新しい制服や」
そう言ってヒナタはシャロンに制服を手渡した。因みに今シャロンが着ているのは、リリアに譲ってもらった寝間着である。
早速シャロンは着替えようとするが、寸前で手が止まる。
「いやさヒナタ。オッサンの着替える所なんて見て楽しいか?」
そうヒナタに聞いた。
「別にええやん。オッサンやったのは、早い話が前世の頃やろ。今は美少女なんだから構わへん」
ヒナタにそう返されて、シャロンは仕方なくヒナタの前で着替える事にした。
着替え終わった後、シャロンはある事に気づいた。
「あれ? マントの色が違う」
今までのマントは下級騎士を示す白だったが、今現在シャロンは身に着けているマントは青色であった。
「それには訳があるねん。ボクについてきてや」
ヒナタにそう言われて、シャロンはヒナタについていき、医務室を出て行った。
※ ※
医務室を出て建物を出ると、其処にはヨハンが居た。
「ヨハン!」
「シャロン!」
シャロンはヨハンの姿を確認すると、ヨハンの柔らかなお腹に抱き付いた。
「三日も眠ってて、心配させてごめんね」
「良いよ。シャロンが無事なのはポール達から聞いていたから」
大きな手でシャロンの頭を優しく撫でながら言った。
「お二人さん。いちゃつくのは後にしてもらないかな?」
様子を見ていたヒナタが言った。
「シャロンには、大事な仕事があるんや」
「大事な仕事?」
シャロンがヨハンから離れながら尋ねた。
「そや! だからついてきてや」
そう言われ再度ヒナタについていくシャロン。その後をヨハンも続いた。
暫く歩いていくと、前日バトルを行ったあの演習場に向かっている事に、シャロンは気付いた。
更に歩くと何やら騒めきの様な声が聞こえ始めた。そして演習場に着くと其処には大勢の竜騎士とドラゴンが居た。
ヒナタが現れると、まるでモーゼの如く竜騎士とドラゴンが道を開けた。開けられた道の先には、学校とかにある朝礼台の様な物があり、その傍らにはレオンが居た。ヒナタは開けられた道を進み、シャロンとヨハンもその後を続いた。人波の間を通っている時、何やらヒソヒソと話声が聞こえたが、シャロンにはその内容が分からなかった。
やがて朝礼台の所まで着くと、ヒナタは朝礼台の上に登った。
「え~先日副団長を決める大会を行った結果、新たな副団長を決める事が出来た」
ヒナタがそう言うと、シャロンの方を見た。
「シャロン、登ってきてや」
「えっ、はい…」
何が何だか分からないまま、シャロンは朝礼台を登った。そしてヒナタが言った。
「彼女、シャロンが新しい副団長や!」
次回でこの章はラストになりますわ。楽しみにしていて下さいな。
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