71・バレた
7月最初の投稿ですわ。
「なんや、シャロンって元の名前から男って分かってたけど、三十越えたおっちゃんやったんか!?」
ヒナタが驚いた様な口調で言った。あれからシャロンは、この世界に来た経緯やヨハンとの出会い、そして盗賊退治の話をしたのだった。
「まぁ、俺はアンタに比べて、この世界に居た時間はまだ短いし、それくらいかな」
「そうやな…ボクと出会う以前の話は、それくらいみたいやし」
「…念のために言っておくけど、誰にも言わないで下さいよ。俺が異世界人なんて知られたら、俺だけじゃなくてアンタにも迷惑が掛かるんですから」
「…出来ればそうしたかったんやけど…」
「?」
ヒナタはそう言うと、医務室の扉の前に行った。
「…彼らは聞いてしまったみたいやで」
そう言ってヒナタは、思いっきり扉を開けた。
「うわぁ」
「きゃあ」
複数の悲鳴と共に、四人の人影が医務室になだれ込んだ。それは…
「ポール、ジャン、トーマス、リリア!」
それはポール達チームメイトであった。
「何時から医務室の扉の前に居たんだ!?」
シャロンがベッドから立ち上がって尋ねた。
「えっと実は…シャロンが意識を取り戻した辺りから…」
と、ポールが苦笑気味に言った。
「それ殆ど最初の場面じゃないか!?」
シャロンが叫んだ。それは即ち今までの話を、全部聞かれていたって事である。
気まずい雰囲気の中、シャロンが口を開いた。
「じゃあ…俺の正体が異世界の三十越えたオッサンだっていうのも分かっているのか?」
「…うん」
ポールが頷いた。他の三人も同じである。
「って事はボクの正体も知られたな…」
ヒナタが言った。
「でも僕は変わらないよ!」
ポールが叫ぶように言った。
「シャロンが例え異世界のおじさんだったとしても、シャロンは僕らの仲間じゃないか! そうだよね皆」
ポールが仲間達に振り向きながら尋ねると、皆はそれに頷いた。
「皆…ありがとな」
シャロンは笑顔で礼を言った。
「そんな美少女の顔で礼を言われても、中身はオッサンだから、なんか微妙だな」
ジャンが苦笑いで言った。
「仕方ないだろ! 話聞いてたんなら、俺の責任じゃないって理解出来るだろ!」
シャロンが反論した。
「つーか詐欺だろ!? 美少女で中身オッサンなんて! 軽く悪夢だぞ」
「だから俺の責任じゃないって!」
口論するシャロンとジャン。それを宥めるトーマス。苦笑してみているポールとリリア。其処には異世界人や年齢の差等なく、確かな仲間のとしての絆があった。
「ええ仲間を持ったな…シャロン」
その様子を見ながら、ヒナタが言った。
シャロンの正体は、一部の人間にバレましたが、関係は今まで通りのままでしたわ。
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