51・合流 2
前話の続きです。
「くっそ! しつけぇ!」
手甲に付いた爪で、ゴブリンを引き裂きながら、ジャンが叫んだ。
「グギャ、グギャギャ!」
ゴブリンが奇声を上げる森の中で、ジャンはリリアを守る様にしながら戦っていた。
『放たれる炎』
「グギャ!」
リリアから放たれた炎魔法が、数体のゴブリンを焼き尽くした。
「きりがないよ。ジャン」
リリアが杖を振りながら叫ぶ。ゴブリンの数は多く、二人でさばくのは苦難であった。
「俺が何とか逃げる隙を作る、その間にトーマス達を探しに行け!」
ジャンがそうリリアに叫んだ。その時…
「その必要は無いぞ!」
その声と共に、後方に居たゴブリンが横一文字に切り裂かれた。更にその隣に居たゴブリンが、胴体を何かに貫かれた。
「大丈夫か? ジャン、リリア」
「シャロン、トーマス」
其処に現れたのは、シャロンとトーマスだった。
「お前ら無事だったか!」
目の前のゴブリンを蹴り倒しながら、ジャンが言った。
「まあな、ポールも無事だ」
「ポール? 何処に居るんだ?」
そうジャンが尋ねた時、森の奥から一本の矢が飛んできて、ゴブリンの眉間を貫いた。屋の飛んできた方角を見ると、木の上で弓を構えているポールの姿があった。
「ポール!」
ジャンが呼び掛けると、ポールは手を振った。
それからの展開は早かった。五人が集結した事によって、ゴブリン達はあっという間に一掃された。
「これで最後だな…」
シャロンが最後の一体を串刺しにしながら言った。
「意外だなシャロン」
トーマスが言った。
「何がだ?」
ゴブリンの死体から、白風を抜きながらシャロンが聞いた。
「普通最初に討伐の任務をやる奴は、魔物を殺す事に嫌悪感を抱いて、出来ないもんだんだが、シャロンはそれを簡単にやり遂げた…騎士団に入る前に、倒した事があるのか?」
「いや、今回が初めてだ」
「マジかよ…」
白風を鞘にしまいながらシャロンは言い、それに対してジャンは驚いた様子を見せた。
「皆、無事?」
其処に離れた所から攻撃していたポールがやって来た。
「無事だ…それよりも、このゴブリン達の討伐照明を集めないとな」
そう言ってシャロンは、腰に差していた短剣でゴブリンの耳を削ぎ落とし始めた。リリアもそれに従じた。するとトーマスが、ポールとジャンを集めて何かを耳打ちした。
「オイ、マジか!」
ジャンが大声を出した。何かと思いシャロンが振りかけると、トーマスとポールがジャンの口を押えていた。
「どうした?」
シャロンが尋ねる。
「いや、何でもない」
トーマスが平然を装って返事をした。シャロンは其れに納得した様に、作業を続けた。
『…ヨン。あの三人何を話していたんだ?』
心の中でヨンに尋ねるシャロン。
『マスターの銃に関する事です』
ヨンが答えた。
『…見られたのか?』
『マスターがポールを助ける際に狙撃した所を、合流しようとしたトーマスに見られたました』
ヨンにそう言われて、心の中で頭を抱えるシャロン。
『…まあ良い…証拠も無いから言い逃れも出来るし…とりあえず良いだろう』
とりあえず、現状は放置する事を決めたシャロンだった。
「ほら、三人も何の話をしているか知らないけど、手伝ってよ」
何にも知らないリリアが、トーマス達に言ったのであった。
描写は無いですが、シャロンは倒したゴブリンの討伐照明を、ちゃんと回収していますわ。
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