50・合流 1
時は少し遡り、森の外で待つドラゴン達の様子は…
「なあ、ヨハン」
待っている間、バージルがヨハンに話しかけてきた。
「何だい?」
「お前さぁ…好きな奴でも居るのか?」
「へぇ?」
突然の質問に戸惑うヨハン。
「何でそんな事を聞くんだ?」
「いやだってさ、お前騎士団の城で色んな雌のドラゴンに注目されているけど、お前全然興味持たないじゃん。って事は誰か好きなドラゴンでも居るのか?」
「それは…」
バージルに指摘され、ヨハンは答えるのに困る。
『どうしよう…確かに好きな娘は居るけど…それはシャロンなんだよね…聞いた話ではドラゴンと人間が愛し合うのはイレギュラーだって話だし…』
困った末にヨハンは考えた答えを出す。
「…確かに僕には好きな娘が居るよ」
「マジか!」
バージルが驚いた反応を見せた。
「でもその子が、困るといけないから、誰だかは教える事は出来ない」
「そんなケチな事言わないで、誰か教えてくれよ」
バージルはそう言うが、ヨハンは絶対に言わなかった。その時…
ダァン!!!
「!?」
その音に素早く反応したのは、ヨハンであった。
「何だ。今の音は? 爆発音か?」
ミリアが森の方を見ながら言った。
「森の中から聞こえたな…ジャンの奴が爆発魔法でも使ったか…? いやでもあんなイ音の魔法は教えてないしな…」
バージルは考え込む様に言った。そんな中ヨハンだけは違っていた。
「シャロン…」
今のはシャロンのソーコムピストルだという事が、ヨハンには理解出来たのだった。
※ ※
「グギャ!」
「!?」
撃たれたゴブリンは声を上げながら、登っていた木から落ちていった。そしてポールは音に反応した。
音がした方を見ると、シャロンが何かを自分の方に向けながら立っていた。
「……」
ポールが見ている事に気づいたシャロンは、素早くソーコムピストルをホルスターにしまった。
「大丈夫か、ポール」
「シャロン」
シャロンは何事も無かったかの様に、ポールが居る木の下まで行った。シャロンが撃ったゴブリンは、撃たれたからか落下したからか不明だが死んでいた。
「今のはシャロンがやったの?」
ポールに尋ねられ、シャロンは少し間を開けた後答えた。
「ああ、石を思いっきり投げ付けたら、運良く…いや、この場合は運悪くか? ゴブリンに当たって、倒すことが出来たみたいだ」
「……」
そう説明するシャロンだったが、ポールは先程シャロンが持っていた物‐ソーコムピストル‐が何だったのか気になった。
「シャロン…あのさ…」
「シャロン、ポール」
其処に現れたのは、槍を携えたトーマスだった。
「二人共無事だったか」
「トーマスもな…ジャンとリリアは?」
「いや、まだ見つかっていない」
「そうか…とりあえず、二人を探そう。ルーン、どの方角に二人は居る?」
シャロンはルーンに尋ねながら、ルーンの能力の事を二人に話した。
「キュイキュイ!」
するとルーンは一つの方向を指さした。
「一か所だけ…? もしかして二人は一緒に居るのか?」
「キュイ!」
シャロンの質問にルーンは頷いた。
「よし、そっちの方向に向かってみよう」
シャロンはそう言って走り出し、ポールも後に続いた。
「……」
唯一人トーマスだけは直ぐには動かず、入っていくシャロンを見つめていた。
「シャロン…さっきの道具は何だ…?」
そう呟いた後に、トーマスも走り出した。
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