表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/366

264・ソウル・オブ・リバース 11

 今回はギャグが半分、シリアス半分ですわ。

 それからヒナタは、廊下で待ちぼうけていた。部屋の扉や壁は防音になっているのか、内部からの音は全く聞こえなかった。やろうと思えば中に入る事が出来るヒナタだが、流石に二人の『お取込み中』を見るのは気まずかったので、シャロンが出てくるまで待つ事にした。

「…考えたんやけど、もしシャロンとヨハンとの間に、赤ちゃん出来たら、どんな子なんやろ? 人間が生まれてくるんか? それともドラゴンか? そもそもシャロンが卵を産んで、ドラゴンが孵るんか? それとも人間が孵るんか…あかん…気持ち悪くなってもうた…」

 自分で考えておきながら、自爆するヒナタ。因みにだが、シャロンも以前、同じ事を考えて、気持ち悪くなってしまった。

「それにしても、二人がここまで愛し合っているとはな…あ~あ~…こないな事やったら、無理矢理でもええから、シャロンとするんやったな…」

と、女の子好きのヒナタは、シャロンと『お取込み』をしなかった事に、若干後悔している。


 カチャ…


「!」

 シャロンとヨハンが居る部屋の扉が開いた。中からは白い大きな姿が出て来た。

「シャロン、少し休んでから戻りなよ」

 部屋の中に居るシャロンに、優しく声を掛けて出るのは、ヨハンだった。

「ヨハンか…ええなぁ…シャロンと『イイ事』して…」

 聞こえないと分かっているが、ヒナタはヨハンへの愚痴を零さずにはいられない。

 ヨハンは扉を閉めた。

「…ごめんね、ヒナタ」

「……はぁ?」

 ヨハンは突然、ヒナタに謝罪する言葉を呟いた。突然の事にヒナタは戸惑った。

「なんや、独り言か? まぁ僕の事が見えないから、当然やろな…」

 まるでヒナタが居るのを分かっているかの様に呟いたヨハンに、ヒナタは少々驚きながらもぼやいた。

「…ヒナタ…見えてるんだ」

「……えっ?」

 ヨハンの言葉に、ヒナタは一瞬思考を停止する。ヨハンはヒナタの方を振り向いて、ヒナタを見つめる。その視線は間違いなくヒナタを捉えている。

「ヨハン…僕が見えるん?」

「…うん」

 ヒナタの問いかけに、ヨハンは頷く。

「えっ? 何で自分見えるん!? 僕って今は幽霊やろ?」

「やっぱり、幽霊なんだね。どうりでシャロン達が何も反応しない訳だよ」

「…何時から見えとるん?」

「僕がさっきシャロンの所に飛んできた時。ビックリしたよ。死んだ筈のヒナタが居るんだから」

「最初からかい…! ちょ待てや! って事は僕が見ているのを知ってて、『イイ事』としようとしてたんかい!?」

 その事実を指摘すると、ヨハンは目を逸らした。

「いやその…流石に部屋の外に出るかなと思って…実際出たじゃないか…」

「そりゃ出るに決まってるわ! そないなエッチな光景、純情な乙女の僕が、見れる訳ないやろ!」

 そう叫ぶヒナタだが、シャロンが聞けば、『純情って…アンタ、今までの自分の行動を顧みろ!』と、ツッコミを受ける事になる。

「ってかシャロンの立場になってみろや! 見られてるって知ったら、めっちゃハズいわい!」

「う、うん…そうだよね…」

 あまりの勢いに、ヨハンはたじろいでしまう。

「まあええ…でも何で、ヨハンには僕の姿が見えとるん?」

「う~ん…分からない…でもどうやら僕だけみたいだね。レオンには見えてなかったみたいだし…」

「どうせなら、レオンも見えてればええのに…前にレオンが言うとったけど、ヨハン何か、『伝説の神竜』って呼ばれてるみたいやな、それと関係しとるんか?。ヒラサカのアホも言ってたし? それ何なん?」

「何って言われても…僕には分からないよ」

「自分の事なのに?」

「レオンがそう言っているだけで、僕は自分が神様っていう考えは無いんだ」

「……」

 困った様に言うヨハンに、ヒナタはヨハン自身が本当に何の事か分からない…という風に受け取った。

「そういえばヨハン…さっきの二人のやりとり…あれ、初めてやないやろ?」

 やりとりに慣れを見抜いたヒナタが、鋭く尋ねる。

「…うんその…僕ら前から何度も…交わったんだ…」

 白い顔を赤らめながら、ヨハンはカミングアウトする。

「うわホンマ…? 羨ましいわ…」

 女の子‐特にシャロン‐が好きなヒナタにとっては、羨ましい話であった。

「僕は死んじゃってるから、そういうのも出来へんし…何で幽霊として、現世にカムバック決め込んだんや…」

 自分にとっては意味の無い現状に、不満を漏らすヒナタ。

「ヒナタ」

 そのヒナタに、ヨハンが真剣な表情と声で話しかける。

「何や?」

「何となくだけど…ヒナタはもうすぐ…帰ってしまうと思う」

 突然のヨハンの言葉だが、ヒナタは驚かない。

「何やそないな事か…僕も何となく、そんな気がしてたわ…昔あった漫画で、『死者が一日だけ、現世に帰れる』って話があったから、僕もそのノリなんやろ?」

「…多分…そうだと…」

「だからシャロンには言わなかったん? 僕が近くに居る事…僕が帰ったら…」

「…シャロンが悲しむ所は、見たくない…」

「……」

 最愛の存在を想うヨハンに、ヒナタは批判出来なかった。

「ええよ。どうせ居たって見えへんし…あのアベルって新顔は、気配に感づいたみたいやけどな…さてと、じゃあ帰るまで団長室にでも居させてもらうわ…シャロンは今日は、団長としての仕事も無いみたいやし…ほなヨハン、さいなら」

 そう言って軽く手を振りながら、ヒナタは団長室の方へと歩き出す。

「ヒナタ!」

 ヨハンが強く口調で呼び止め、ヒナタは足を止める。

「あとで…シャロンを団長室に向かわせるから…最後に会いなよ…」

 それはヨハンのヒナタに出来る、唯一の気遣いであった。

「別にええよ! どうせ、僕の姿は見えへんし、僕の声も聞こえへんし!」

 そう明るく言いながら歩くヒナタだが、その姿は寂しそうであると、ヨハンは感じた。


 まさかヨハンは、ヒナタが見えていたとは…。ヒナタは最後にシャロンと会えるのか…?

 ソウル・オブ・リバース…あと一話…最大でも二話で終わりですわ。その後ワンクッションおいて、ぼのぼの編最後の話になりますわ! なんだかんだ、一年以上もやっとるわな…(苦笑)。

 感想・ブックマーク登録・レビュー・ポイント評価・質問等ありましたら、是非どうぞ♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作を投稿しましたのと、リンクの貼り付けに成功したので、良かったらどうぞ♪  青き竜の花嫁
― 新着の感想 ―
[一言] >もしシャロンとヨハンとの間に、赤ちゃん出来たら、どんな子なんやろ?  ・シャロンとヨハン両方の特徴を併せ持った、ハイブリッド新種族が誕生。(人に角・羽・尾付いたイメージの竜人、髪の毛とアン…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ